名護市辺野古海域に生息する天然記念物のジュゴンを保護するため、日米の環境保護団体や個人が1日(米現地時間7月31日)、米サンフランシスコ連邦地裁に対し、新基地建設の差し止めを求める追加の申し立てをした。

 国家歴史保存法(NHPA=米国の文化財保護法)という米国の法律を根拠に、米国防総省を相手取り、米国内で裁判を起こして沖縄のジュゴンを保護する、という極めてユニークな取り組みだ。

 いきさつはこうである。

 国家歴史保存法は、米国が海外で活動する場合、相手国の法律で保護されている文化財であれば、同じように保護の対象とする、ことをうたっている。ジュゴンは、日本の文化財保護法で指定された国の天然記念物である。

 「沖縄ジュゴン訴訟」の原告団は、この点に着目して2003年9月、辺野古海域への新基地建設計画はジュゴンに悪影響を与えると指摘し、サンフランシスコ連邦地裁に提訴した。

 08年1月に出た中間判決は、画期的な内容だった。国家歴史保存法は海外で活動する米政府機関にも適用される、との初めての判断を示し、環境影響評価を実施するための計画書の提出を求めたのである。

 連邦地裁は民主党政権下の12年2月、代替施設の建設計画がはっきりしないとの理由から裁判の休止を決定した。 政権が代わって辺野古現地で埋め立てに向けた工事が始まったため、危機感を抱いた原告団が休止していた訴訟の再開を申し立てたというわけだ。

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 国防総省は今年4月、日本政府が実施した環境影響評価をもとに、「基地建設はジュゴンに最低限の影響しか与えない」との報告書を提出した、という。

 連邦地裁はこの情報だけで判断を下してはならない。防衛省が提出した埋め立て承認申請に対する県環境生活部の意見は、ジュゴン保護について、いくつもの疑問を提示しており、意見全文を英訳して詳細に検討することが欠かせない。

 日本自然保護協会によると、今年の5月半ばから7月初めにかけてのわずか2カ月の調査で、埋め立て予定海域からジュゴンの食痕(しょくこん)が110本以上も見つかっている。

 これは防衛省が実施した環境影響評価の後に出てきた事実である。その事実を検証もせずに、「基地建設の影響は軽微」だなどとはいえないはずだ。関連工事を中止し、再調査を実施すべきである。

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 沖縄のジュゴンは国の天然記念物であると同時に、「北限のジュゴン」であり、絶滅危惧種でもある。

 それだけではない。辺野古沿岸域は、県の「自然環境の保全に関する指針」において、「自然環境の厳正な保護を図る区域」(ランク1)と評価されている生物多様性の豊かな海域なのである。

 サンフランシスコ連邦地裁には「沖縄出張法廷」の実現を求めたい。

 その目で辺野古の海をじかに見て、その耳で地元の意見を聞くことだ。