8月の炎暑の日に空を見上げると、何げなく「被爆した人たちはどんなだったろう」と思うことがある。熱さと痛みと、渇きと…。想像を絶するあえぎが頭に浮かび、耐えられずに身もだえする

▼その原爆を広島に投下した米軍爆撃機「エノラ・ゲイ」の乗員のうち、最後の生存者だった米国人男性(93)が7月末に亡くなった。各紙に載った被爆者の反応は、加害者への恨みではない。むしろ関係者が減ることで、人々の記憶が薄まることを懸念していたことが印象的である

▼政府の統計では、全国の被爆者は約19万3千人。平均79・4歳で、毎年9千人以上が亡くなっていく

▼人知が作った原爆の強烈な光の粒は、いまも宇宙の中を進んでいるのだろうが、原爆の惨劇の記憶は消えいこうとしている。沖縄戦も同様、実相を伝え継ごうにも、思うようには伝わっていかない。そんな戦後69年の現実がある

▼被爆体験を基にした漫画「はだしのゲン」を意図的に児童から遠ざけた教育委員会があったり、被爆者に「死に損ないのくそじじい」と暴言を吐いた高校生がいたり。原爆をめぐるニュースに、もの悲しくなった人も多かろう

▼被爆者も含め多くの国民の懸念、反対をよそに、集団的自衛権の行使容認が閣議決定されたことし。追悼とは別に、暗い何かが胸をよぎる8月6日である。(宮城栄作)