代理出産で生まれた障がいのある赤ちゃんを、遺伝的つながりのある両親が引き取らなかった問題は、生殖補助医療とは何か、という問いを突き付ける。

 現地メディアなどの報道によると、代理母となったのは21歳のタイ人女性。代理出産を依頼したのはオーストラリア人の夫婦。タイ人女性は昨年12月、地元の病院で男女の双子を出産した。そのうち男児はダウン症で、依頼者夫婦は女児だけを連れて帰国した。

 オーストラリアでは禁じられている技術を求めて海を渡ったのは、切実な思いからなのだろう。しかし「命の選別」にも見える仕打ちはあまりにむごい。

 金銭をともなう商業的代理出産では、胎児に異常が認められた場合、中絶するよう契約に盛り込むケースが少なくない。今回、出産したタイ人女性も、妊娠7カ月の時点で男児の障がいが分かり、仲介業者から中絶を求められたという。

 これまでも代理出産では、障がいのある子が生まれた場合のトラブルが指摘されてきた。健康な子だけを受け入れるという流れがあるのだとしたら、倫理的、社会的問題は大きい。

 どんな出産でも、障がいをもって生まれてくる子どもはいる。そして障がいがあっても、大きく成長する可能性を秘めている。

 ダウン症の男の子は代理母が、「自分で育てる」と引き取ったそうだ。心疾患を抱える男児の治療費にと善意の寄付金も寄せられているという。

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 国内には、いまだ第三者が関与する生殖補助医療の明確なルールがない。日本産科婦人科学会や厚生労働省は代理出産を禁止している。そのため海外へ渡り、子どもをもうけようとする人が後を絶たないのだ。 

 代理出産は女性の体を生殖の手段として使うもので、時に命の危険をともなうほどの負担を強いる。インドやタイで代理出産のニュースが多いのは、貧しく立場の弱い女性たちが仕事を引き受けているからである。

 双子を出産したタイ人女性も、生活のためお金が必要で、仲介業者を通じ120万円ほどの報酬で引き受けたと話していた。

 先進国の不妊カップルのニーズが生み出す商業的代理出産は、経済格差の問題も浮き彫りにする。

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 生殖補助医療法案が自民党のプロジェクトチームによって準備されている。子宮を摘出した場合などに限り代理出産を認める内容が提示される一方、代理母が負うリスクの議論は尽くされていない。大事なのは子どもも当事者の一人として、その幸福を第一に検討を進めることである。

 生殖補助医療の進歩は、たくさんの不妊カップルに希望を与えてきた。が、同時に養子を迎えるなど血のつながりにこだわらない多様な家族、人生について考える柔軟さも必要だ。親に恵まれない子と、子に恵まれない親がうまく出会えるシステムづくりにも力を入れてほしい。