自民党が大勝した昨年夏の参院選の影で、「憲法9条を世界遺産に」を公約に掲げ、無名ながら落選候補で最多の17万票を得た「選挙革命家」がいた。ミュージシャンの三宅洋平さん(36)=本部町。名護市辺野古で、新基地建設をめぐり市民と警察が衝突する様子を7月末、6万人のフォロワーがいる人気ツイッターに投稿した。「みんなに関係がある。自分の頭で考え、行動してほしい」との思いを込めた。(矢島大輔)

地元の子どもたちと話す三宅洋平さん。1年前の選挙フェスの頃と変わらないラフないでたちだった=本部町の町営市場

昨年の参院選、JR渋谷駅のハチ公前で「選挙フェス」を開いた三宅洋平さん(右)。多くの聴衆であふれた=東京都渋谷区、2013年7月20日、伊藤愛輔さん撮影

地元の子どもたちと話す三宅洋平さん。1年前の選挙フェスの頃と変わらないラフないでたちだった=本部町の町営市場 昨年の参院選、JR渋谷駅のハチ公前で「選挙フェス」を開いた三宅洋平さん(右)。多くの聴衆であふれた=東京都渋谷区、2013年7月20日、伊藤愛輔さん撮影

 ベルギー生まれ。リクルート社員を経て、音楽活動を始めた。ステージから脱戦争経済や脱原発を訴えた。思いがあふれ、演奏時間を大幅にオーバーし、主催者に怒られることもしばしばだった。

 東日本大震災の原発事故がきっかけで、小さな娘を連れ本部町に移り住んだ。東村の米軍ヘリパッド建設への反対、普天間飛行場を囲む抗議行動に参加した。県民同士が警備と抗議側に分かれ、争わされている姿に胸が痛んだ。

 「原発の立地が検討されている地域も、同じ構図だった。(政治決定の)元栓の部分から変えなきゃいけないと思った」

 昨年7月、ネット選挙が解禁された参院選の比例区に立った。お金も、知名度もない初めての選挙。「泡沫(ほうまつ)候補」とやゆされながら、音楽ライブと街頭演説を融合させた「選挙フェス」で訴えた。政治に関心のなかった若者がその様子をネットで拡散し、演説会場には人だかりができた。「選挙革命」と評された三宅さんは言う。

 「誰にでも政治への関心は潜在的にある。本気で訴えれば伝わり、広がるんだと思う」

 選挙期間中、最後の街頭演説は、憲法第9条の全文を読み上げて締めた。

 それから1年-。選挙で国会の「ねじれ」を解消した自民党は特定秘密保護法を成立させ、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。原発の再稼働、そして辺野古の新基地建設に突き進んでいる。

 落選した三宅さんは那覇市の雑貨店「三宅商店」を営みながら、音楽活動を続ける。地域の祭りに呼ばれ、歌うこともある。今も思いは変わらない。

 「(政権交代した2012年衆院選の)自民党の得票数は約1700万票。選挙に行かなかった人は約3千万人いた。ある意味、この国の最大政党。彼らが変われば、現状は変わる」

 11月8、9日、今年で4年目の野外フェス「残波JAM」(読谷村)を開催する。辺野古の基地問題が争点になる県知事選の投開票日を翌週に控える。三宅さんはステージから、こう呼びかけるつもりだ。

 「俺らの未来を大きく左右する選挙。誰に投票してもいいけど、もっとみんなで語り合おう」

 [ことば] 選挙フェス 昨年夏の参院選で三宅氏らが提唱した新たな選挙運動。ラフな姿で街頭に現れ、政策を音楽に乗せて発信した。ツイッターのフォロワーは選挙期間中に4倍の5万人に到達した。増加数は候補者の中で最も多く、ネット選挙を象徴する出来事だった。獲得した17万6970票は、自民党の比例区最下位当選者(元大阪府知事)を10万票近く上回った。