北海道東川町が「写真の町」宣言をした1985年当時、「何ができるのか」と町内外から厳しい声も多かったという。94年に始まった高校生の写真甲子園は今年で21回目。全国521校が応募する写真部員憧れの大会となった

▼個人ではなく3人一組のチームで競うところがいい。仲間と撮影地を駆け回り、意見をぶつけ合い、一喜一憂する中でドラマが生まれる

▼人口7800人の小さな町で毎年の開催は簡単ではない。だが町民による食事の準備や被写体になった家族が作品発表の場に駆け付ける姿など、手作りのぬくもりを感じる

▼公開審査会でスクリーンに豆腐屋のおばちゃんのポートレート作品が映った瞬間、会場の緊張が和んだ。毎年のように被写体になる有名人だ。客席から「今年も出た」とうれしそうな声が聞こえた

▼人々の暮らしや街並みの移り変わりを毎年、全国の高校生が記録していく。優勝を目指し、気持ちを込めて撮られた力作ぞろいの「町のアルバム」。なんとぜいたくな地域おこしだろうか

▼真和志高3年の池原亜希乃さんは「ホームステイ先のお母さんが真剣にしかってくれた。出会いが一番の財産です」と目を潤ませた。「写真がうまくなるよりも大事なことがある」。審査委員長の写真家、立木義浩さんが講評で繰り返した言葉は確かに伝わったはずだ。(田嶋正雄)