「数十年に1度の災害」が予想され、気象庁が全国で初めて台風の「特別警報」を出した7月の台風8号で、「避難勧告」の対象住民約68万4千人のうち、避難所に避難したのは947人(0・14%、自主避難含む)だったことが分かった。避難勧告を発令する市町村の判断の遅れや認識不足が影響したとみられ、最大級の警戒を呼び掛ける警報が実際の避難に必ずしも結び付いていない現状が浮かび上がった。(新垣卓也・矢島大輔)

特別警報クラスの台風接近時のモデルチャート図

 沖縄県防災危機管理課によると、台風8号による重軽傷者は36人、住宅の床上・床下浸水は179件、土砂崩れが91件起きた。

 暴風・波浪の特別警報を発表された後、22市町村が避難勧告を出していた。さらに事前に乳幼児やお年寄り、障がい者らの避難を促す「避難準備情報」や、勧告より強い「避難指示」はなかった。

 また、本来は避難が必要な地域に絞って出すべき避難勧告を、17市町村が全域で出しており、「勧告の軽視につながる」との懸念がある。

 避難勧告は安全な屋内での避難も意味する。しかし、避難勧告を出さなかったある自治体の担当者は「台風の規模が予想を上回り、避難勧告を出そうとしたが、外は暴風雨で手遅れだった」と話しており、市町村の判断の遅れが住民に避難所に足を向ける選択肢をなくした可能性がある。

 沖縄気象台は「大型化する台風に対し、特別警報が出てから避難勧告を出すのでは遅い。段階を追って、危険な地域に絞って避難情報のレベルを上げるべきだった」と指摘している。

 沖縄タイムスが被害のあった地域の住民に取材したところ、自主避難を呼び掛ける自治体の放送が激しい風雨でかき消されたり、特別警報や避難勧告が解除された時間に浸水被害が起きていたことが分かった。自治体の判断を待たず、自主的に公民館を開放し、避難を促した地域もあった。

 内閣府が4月に改定した「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」は、近年の大災害の教訓や特別警報の運用を踏まえ「空振りをおそれず、早めに避難勧告等を出す」ことを基本方針にしている。判断基準や参照する情報も示し、市町村にマニュアル作成を呼び掛けている。

■情報の周知 不十分

 防災に詳しい沖縄国際大の稲垣暁特別研究員の話 市町村には避難情報を出すためのノウハウが乏しかった。さらに特別警報や避難情報の意味が十分に住民に伝わっておらず、どう動けばいいか分からない状況が生まれていた。一方、住民側も「台風には慣れているから大丈夫」と根拠のない理由から避難行動をしなかった可能性がある。行政の情報だけに頼らず、自主的に避難をすることも求められる。