働く人の多くが安定した就職先を求めるのは、安定した生活と深くかかわるからだ。安定した生活は、結婚し子どもをもうけるといった将来像を描きやすくする。安心できる生活は、生きがいの実現をサポートする。

 県内で「働く」ことの問題が盛んに論じられるのは、非正規雇用や離職率、賃金など「雇用の質」にかかわる厳しい課題を抱えているからである。

 総務省の2012年就業構造基本調査から分かるのは、非正規労働者の比率の高さと深刻な実態だ。全国平均38・2%に対し、沖縄は44・5%で全国一高い水準。さらに若年者では全国35・3%に対し、沖縄は50・4%と跳ね上がる。実に2人に1人が非正規で働く。

 高校や大学を卒業して最初の就職先が非正規というのは珍しいことではない。しかし社会人の入り口での不安定雇用は職への意欲を削ぐばかりか、格差の固定化を招きかねない。

 厚生労働省の離職状況調査によると、10年3月に卒業して就職した沖縄の若者のうち3年以内に仕事を辞めた人の割合は、高卒で55・5%、大卒で49・1%。それぞれ全国より20ポイント近く高い数字となっている。

 社会人としての心構えや忍耐を指摘する声もある。雇用のミスマッチという原因もあるのだろう。それでも高卒で5割を超える数字は異常に高く、労働条件の悪さなど、働き続けることが困難な問題を内包する。

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 牛丼チェーン「すき家」でアルバイトが次々と辞め、休業に追い込まれる店舗が相次いだ。調査を進めてきた第三者委員会が報告書をまとめている。

 「月平均残業時間は109時間で、法令違反状況」「現場に無理をさせない限り運営できない」など、過重労働を厳しく指摘する内容だ。

 コスト削減のためとはいえ、低賃金で長く働かせ利益を上げるやり方は、まっとうではない。いくら名が知られていても、従業員を使い捨てにするような会社には、当然批判の目が向けられる。

 すき家の問題がよそ事に思えないのは、安価な労働力頼みの似たような環境が県内でも見られるからだ。

 「ブラック企業」対策として厚労省が昨年夏に実施した調査では、情報を基に選んだ県内27社のうち21社で長時間労働や残業代不払いなどの法令違反があった。過重労働を強いる会社の多さを推測させる結果である。

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 全国一低い水準にある沖縄の労働環境を底上げするため、県が15年度から全庁的な対策に乗り出す。手始めに県内1万5千事業所の事業者と労働者を対象に、労働環境の実態を調査する。

 これまで沖縄の雇用政策は失業率の改善を最大の課題としてきた。「量」の確保を優先するあまり、「質」の課題を後回しにしてきたのだ。悪化する雇用の内実を前に、質向上への政策転換が求められる。

 フルタイムで働けば子どもを育てていける社会、若者が安心して暮らせる社会が、求める質の目標ラインである。