「丁寧に説明し、理解を得たい」

 米軍普天間飛行場の移設問題で、安倍晋三首相をはじめ政府首脳が、好んで使う決まり文句である。これほどむなしく響く言葉はない。

 真情のこもらないうわべだけの言葉と、米軍政下の土地接収を思い起こさせる強硬な姿勢。なりふり構わず既成事実化を図ろうとすればするほど、新基地建設の理不尽さ、異常さが浮かび上がる。

 沖縄防衛局は、終戦記念日もお構いなしに全国から巡視船を大量投入し、警備員、作業員を雇い、ブイ(浮標)、フロート(浮具)の設置作業を進めた。17日には、日曜日にもかかわらず、ボーリング調査の足場となる台船を海上に設置した。

 名護市辺野古沿岸部の埋め立てに向け、海底の地質などを調べるボーリング調査がいよいよ本格化するが、現場では、海上保安庁の強硬姿勢が目立つ。

 15日の作業では、カヌーやボートで示威行動を行った市民を海上で一時拘束し、強制的に排除した。

 辺野古海域に出る漁船長に対しては、指示に従わせる「立入検査指導事項確認票」への署名を迫った。確認票は「工事作業区域には進入しない」「工事作業船や工事警戒船に接近しない」など5項目。

 指導に従わず違反行為を繰り返した漁船が対象だと説明しているが、初めて辺野古海域を訪れた漁船長も対象になっている。

 あきらかにやり過ぎだ。航行の自由や表現の自由に抵触するおそれもある。

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 海上保安庁、防衛省・沖縄防衛局はなぜ、これほど強硬なのか。

 10年前の2004年、防衛庁は当時の計画に基づいて埋め立て予定海域に単管やぐらを設置し、ボーリング調査を実施しようとしたが、反対派の阻止行動にあって調査を断念、移設計画そのものを見直したいきさつがある。

 その際、防衛庁は海保に対して強制排除するよう求めた。海保は「強制排除を執行すると、流血の事態を招く恐れがある」との理由で拒否したという(守屋武昌・元防衛事務次官著『「普天間」交渉秘録』)。

 海保の姿勢が180度転換したのは、「同じ轍(てつ)を踏むな」という合意が官邸と防衛省の間に出来上がっていたからだ。安倍首相と菅義偉官房長官の強い意向が働いているのは間違いない。

 強硬一点張りの先には、11月の県知事選を見据えた官邸のシナリオがある。

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 ボーリング調査を早めに終わらせ、後戻りはできないという空気を醸成して辺野古移設問題の争点化を避け、並行して現職をバックアップするような振興策や負担軽減策を打ち上げ、仲井真弘多知事の当選を勝ち取る。それが官邸のシナリオである。

 だが、このシナリオには、重大な欠陥がある。沖縄の人々の尊厳、歴史体験に根ざした平和を求める心を軽んじ、何でも金で解決できると思っている点だ。政権のおごりは、民主主義の健全な発展の妨げになりつつある。