この夏、高い頂を狙う沖縄の若者の挑戦を見て何度か身震いした。東京で勤める前にスポーツ取材の経験はほとんどなく、カメラを持つ手の震えを抑えようと力が入っていた

▼6月に後楽園ホールであったプロボクシングの東洋太平洋フライ級王座決定戦が一つ。激しい乱打戦の末、江藤光喜選手(26)がチャンピオンベルトを手にした。強打をくらいフラフラになりながらも立ち向かって、逆転KO勝ちを収めた。血みどろの闘志が目に焼き付いている

▼20日の夏の甲子園での沖縄尚学の試合もそうだった。9回裏のサヨナラ勝ち。アルプススタンドにさく裂した大歓声の余韻が耳に残る。夏2勝の「壁」を突破したナインの粘り強い戦いぶりに、心震わせた人も多かろう

▼「最も深くかがむ者が、最も高く飛躍できる」。日産の経営者で、日本経営にも影響を与えるカルロス・ゴーン社長は、業績がV字回復した際に語った

▼江藤選手も沖尚ナインも、過去の敗戦の悔し涙と、つらい練習に耐えた汗を重しにして深くかがみ、勢いよく弾ませて至った現在地であろう。世界タイトル、初の夏制覇と、先の高みを見据えている

▼さあ、きょうも一戦。それぞれが目標地点で勝ち名乗りを上げる場面を想像し、胸を膨らませている。かがむ足が少しおっくうになった身に、活をもらいながら。(宮城栄作)