久米島町で紅イモの増産が続いている。生産者を悩ましていた病害虫のアリモドキゾウムシが2013年1月に根絶されたことで沖縄本島などへの本格出荷が可能になり、町を挙げた生産振興とブランド化へ一気に火が付いた。根絶の見通しがたった12年から拡大し、生産量は前年の約2・5倍に当たる557トンを記録。13年も638トンに伸びた。久米島産への評価の声は高まり、同町は増産態勢を全面的にバックアップする。県も拠点産地の認定に向けた動きを加速させている。(粟国祥輔)

久米島町の紅イモの生産量の推移

 紅イモなど甘藷(かんしょ)に甚大な被害を及ぼすアリモドキゾウムシとイモゾウムシの2大病害虫が国内では沖縄にだけ生息する。防除が難しく、植物防疫法で作物の本土への持ち出しが禁止され、生産振興の妨げとなっていた。

 一方、県と国は1990年に久米島町で根絶事業に乗り出し、技術の確立などを経て94年から防除を開始。誘殺剤で個体数を低減し、98年からは放射線で不妊化した雄虫の散布を始め、2012年度までに約4億5千万匹を放った。その結果、13年1月に実質的な根絶宣言、同年4月の省令改正で植物防疫法に基づく移動規制が解除された。

 根絶を見据え、12年から町内の紅イモ生産は拡大に転じ、12年の面積は32・9ヘクタールで前年比3割増、生産量は約2・5倍の557トン。13年産も伸長。農家数は新規就農者も増え、約80人になった。アリモドキゾウムシが根絶されていない沖縄本島などの他地域への出荷に力を入れる。

 病害虫の被害を受けて悪臭を放ったイモは方言で「イリムサー」といわれ、「牛も食べない」と酷評された。イモゾウムシよりも圧倒的に個体数が多いアリモドキゾウムシの根絶で、市場関係者は「イリムサーの心配がなく商品価値は高い」と久米島産を評する。

 「元祖紅いもタルト」のお菓子のポルシェ(読谷村)は久米島産の原料を月30トンから40トンに引き上げることを検討している。調達責任者の古堅繁彦生産本部長は「安心して仕入れている。さらに植え付け増やすよう農家に伝えている」と話す。

 県も産地のブランド化に向けて支援を急ぐ。同町は現在、県と協力しながら拠点産地の認定取得に向けて生産者やJAなどと地区協議会設置の準備を進めている。県糖業農産課の担当者は「年内の申請、来年早い時期の認定につなげたい」と話している。

 [ことば]アリモドキゾウムシ ゾウムシ類の病害虫で主に甘藷(かんしょ)に寄生する。明治時代には沖縄全域で被害を与えていたとされるが、侵入経路は不明。未発生地域への移動は法律で禁じられている。沖縄全域でイモに被害を与えるイモゾウムシは根絶のめどが立たない状況で、久米島を含めて県外へのイモの移動は禁止されている。