世界保健機関(WHO)の国際疾病分類では「病的賭博」と記述されている。パチンコやスロット、競馬といったギャンブルにのめり込み、自分をコントロールできず、問題を起こすギャンブル依存症のことである。

 そのギャンブル依存の発症率が、日本は各国と比較して突出して高いと、厚生労働省研究班が発表した。秋の臨時国会で本格審議が始まる「カジノ法案」にくぎを刺す内容だ。

 研究班が昨年7月に実施した調査によると、ギャンブル依存症と疑われる人は、成人男性が438万人、女性が98万人で、合計536万人と推計。この数値は成人の約5%に上るもので、世界のほとんどの国が1%前後にとどまるのに比べてかなり高い。

 専門家は、カジノが特定の地域に限られる海外に対し、日本はパチンコやスロットが身近なところに普及していてギャンブルに接しやすいためではないかとみている。2008年の推計値と比べても高止まりの状態にあり、早急な治療環境の整備が必要と話す。

 6月に那覇市内のパチンコ店駐車場で、車内に放置された乳児が熱中症で死亡する痛ましい事件があった。母親は子どもを残したまま約6時間半、スロットに興じていたという。

 子どもの命といった最も大事なものよりもギャンブルを優先したのはなぜか。事件の背景として指摘されたのが、依存症の問題だった。

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 ギャンブル依存症が進行すると、配偶者への暴力や児童虐待などといった形で家族を傷つけることが多い。しかし家庭内という密室で起こっているため、病気の深刻さが理解されにくい。

 ギャンブル依存症は心の病である。意志の弱さや道徳を説いても解決しない。必要なのは適切な治療と支援だ。

 カジノとホテルが一体の複合リゾート施設の整備を進めるカジノ法案は、安倍政権の成長戦略とも重なり、前のめりに進む。そこで強調されるのは、外国人観光客の誘致や地域活性化の起爆剤にという経済的な側面である。

 厚労省研究班の代表を務める樋口進・国立病院機構久里浜医療センター院長は「ギャンブルには負の側面がある」と慎重な議論を求めている。

 今回の調査結果を基に、なぜ依存症患者が多いのか、きちんとした分析と、依存症対策の道筋を示すことが先決である。 

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 地方自治体のカジノ誘致合戦の中で、仲井真弘多知事は最も熱心に動く一人だ。県民意見が大きく割れているにもかかわらず、コンセンサスを得る前に既成事実化しようという手法は強引に映る。

 基地負担と引き換えの振興策のように沖縄が候補地に挙げられている点も気になる。

 お金持ちの外国人を相手にするカジノが、観光振興の打ち出の小づちとなるのか。カジノで潤うのが誰なのか見極めなければならない。

 今も、これからも、沖縄の観光振興の核は、地域が誇る自然や文化を守り生かしていくことである。