防衛省は先月、沖縄の米海兵隊普天間基地のオスプレイを佐賀空港に移転させたいとの意向を佐賀県に伝えた。会合には県側と水面下で接触を続けてきた元防衛事務次官の増田好平防衛省顧問が出席しており、国と地元とのすり合わせをうかがわせた。

 ただ、一部で浮上した誘致話の対象は自衛隊であり、海兵隊ではない。ましてオスプレイは想定外だろう。一方、米政府は佐賀移転案に驚き、「機体整備に問題が出る」と反対の意向を防衛省に伝えている。どこからみても急ごしらえの佐賀移転は、11月の沖縄県知事選挙で、普天間基地の名護市辺野古への移転を認めた仲井真弘多知事を側面支援する狙いがある。仲井真氏が主張する「5年以内の普天間閉鎖」が実現できるからだ。

 佐賀移転が実現すれば、辺野古移転は不要となる。しかし、防衛省は14日、辺野古沿岸部でボーリング調査に向けたブイの設置を強行した。調査中止に追い込まれた2004年と違って、海上保安庁が参加しており、政府挙げての強硬策といえる。

 とはいえ、佐賀移転は「付け焼き刃」であり、辺野古移転は「ごり押し」である。まるで整合性のないふたつの政府計画から浮かぶのは、米政府の安全保障政策に追従するという日本政府の奇妙な実像であろう。普天間機能を維持したい米政府の意向は日本政府にとって「絶対」なのだ。

 元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は「日本政府は、戦後一度も米国の武力行使に反対したことはない」という。米国によるアフガニスタン戦争、イラク戦争に自衛隊を派遣したのは、常に米国の立場を理解し、支持してきた証拠である。

 米軍基地について、例外であるはずがない。日本政府は米政府との関係が「主従関係」である以上、国と地方との関係においては、地方を言いなりにさせるという歪(ひず)んだ支配者意識を招いている。沖縄の基地機能とは何か、また海兵隊基地に定数通りの米兵がいるのか、中身の検証をすっ飛ばして「抑止力」と強弁するのは、米政府が沖縄の基地を手放さない以上、基地を維持するには大義名分が必要だからである。

 歪んだ主従関係は安倍晋三政権で頂点に達した。政府は昨年暮れ、国家安全保障戦略を策定し、地盤沈下した米国を軍事力で補う強い意気込みを示した。集団的自衛権の行使を解禁して米国を助けるというが、国民の戸惑いは行使の是非をめぐる世論調査で「分からない」が最多であることから明らかだ。

 国民の支持と理解がないまま、突っ走る政治の行く末は知れている。沖縄の基地問題は、安倍政権がつまずく最初の一歩となるかもしれない。(東京新聞論説兼編集委員)