山崩れで生じた土石流を山津波とも呼ぶ。広島市を中心に降った局地的な豪雨で引き起こされた山津波の濁流は山を削り取り、木々をなぎ倒し、同市安佐南区、安佐北区の広範囲の住宅地をのみ込んだ

 ▼死者・行方不明者は90人近くに上る。その中には11歳と2歳の兄弟や救助活動中の消防署員(53)もいる。家族や関係者の無念さを思うと、胸が締め付けられる

 ▼発見された遺体で、22日、行方不明になっていた広島市安佐南区の高校3年鳥越康太さん(17)の身元が判明した。元野球部で、ポジションは捕手。代打の切り札で、ムードメーカー。「とりちゃん」と呼ばれ愛されていた。22日付朝刊社会面に人柄が紹介された。現場で鳥越さんの帰りを待つ同級生らの祈りは届かなかった

 ▼広島市では多数の犠牲が出る土砂災害がたびたび起きている。だが、ほとんどの被災地は、重点対策の対象となる「土砂災害警戒区域」に指定されていなかった。市の避難勧告も遅れた

 ▼宅地開発で山ぎわまで広がった宅地、土壌の弱さ-。過去の災害との共通点は多い。検証し、悲劇を繰り返さない取り組みが犠牲者への弔いになる

 ▼現地で降り続く雨の中、懸命な捜索活動が続いている。生死を分けるといわれる72時間を過ぎた。一人でも多くの命が救われることを祈るばかりである。 (与那原良彦)