名護市辺野古の海を埋める以外、抑止力を維持しつつ負担軽減する道はない、と政府は強弁する。集団的自衛権と同様、政府は「抑止力」を紋所に国民を思考停止に陥れる。

 在沖米軍基地の75%を占有する海兵隊の運用が基地問題を考える基礎的な要素となるはずだ。しかし政府はその肝心な部分を論じようとしない。

 政府が繰り返すのは沖縄の地理的優位ばかりだが、それは尖閣に近く、中国をにらむ東シナ海を望むという地図の見方を述べているにすぎない。海兵隊の機能的分析を踏まえた説明はない。おそらく実態論を持ち出すと政府の論理が崩れるからだろう。

 沖縄の海兵隊は米軍再編によって、組織の中核である第4海兵連隊(歩兵)がグアムへ移転し、今後は第31海兵遠征隊(31MEU、2千人)が主力となる。31MEUを編成する部隊は6カ月ローテーションで米本国から沖縄に派遣され、長崎県佐世保のヘリ空母を含む揚陸強襲艦隊に乗船してアジア太平洋地域をパトロールする。だから四六時中沖縄に駐留し日本を守っているわけではない。

 31MEUは同盟国と共同訓練(人道支援、災害救援活動を含む)を通して軍事外交を展開。中国軍を招いた共同訓練も実施するなどアジアの安全保障網を維持管理する任務を帯びる。日本がいたずらに中国脅威論をあおるとアジア安保の阻害要因になりかねない。

 沖縄海兵隊基地の役割は遠征部隊と艦隊の「ランデブー・ポイント(落ち合い場所)」。艦船は長崎なので部隊駐留は本土のどこかでも支障はない。グアム、オーストラリアなどでもいい。政府はこの当たり前の軍事合理性を一切語らず、実態のない「抑止」という言葉で沖縄に基地を押しつける。

 森本敏前防衛大臣が2012年暮れの離任会見で語った「本土移転は軍事的に可能だが、政治的に不可能」という言葉の意味をしっかり認識する必要がある。それは、日米同盟・米軍駐留に賛成だけど負担は嫌だから沖縄に回せ-という破廉恥な安保政策があるということだ。

 海兵隊は本土でも構わない。普天間の危険性除去を理由に名護を人身御供にする政治に大義はない。論理を失った政治こそ抑制は効かない。

 米軍再編で明かされたように海兵隊は部隊を分散配置しても機能は維持される。基地問題は軍事合理性よりも政治の意志が大きなウエートを占める。その意味で11月の県知事選は沖縄の運命にとって大きな分岐点となる。

 沖縄基地問題を抜本解決する「第三の道」を探る起点とするか、あるいは不条理な基地押しつけに跪(ひざまず)くか。沖縄は百年の計をかけた選択を迫られる。

 沖縄問題の解決策は、日米関係のみならずアジアの安保環境にも好影響をもたらす道筋を追求する必要がある。(元沖縄タイムス論説委員/フリーライター)

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 シンポジウムは25日午後7時から、那覇市の沖縄かりゆしアーバンリゾート・ナハで開かれる。前売り券は24日までにメールで申し込む。名前、住所、電話番号、希望枚数を明記。アドレスはinfo@nd‐initiative.org