政治や外交問題に取り組むシンクタンク「新外交イニシアティブ」(ND)の設立1周年記念シンポジウム「どうする米軍基地・集団的自衛権-オキナワの選択」が25日夜、那覇市の沖縄かりゆしアーバンリゾート・ナハで開かれた。「抑止力」を安全保障の観点から分析。海兵隊の任務や役割をひもときながら「沖縄に駐留しなければ抑止力を維持できないというのはうそだ」と日本政府の姿勢などを批判した。

 今月発刊したND編「虚構の抑止力」の著者5人のうち4人が登壇。

 ND理事で元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は、抑止力を理由に普天間飛行場の名護市辺野古移設を進める現状に「フロートの設置や掘削調査はやる気になればできるだろうが、それは始まりにすぎない。地方からノーを突きつけ、米国政府に伝えることが重要ではないか」と語った。

 東京新聞論説兼編集委員の半田滋氏は2012年の米軍再編見直しで在沖海兵隊の主力部隊のグアム移転が決まったと説明。「実戦部隊を動かすことで、(沖縄駐留の意義を)抑止力では説明できなくなった。付け焼き刃の安全保障政策は偽物だと示した」と強調。

 元沖縄タイムス論説委員でフリージャーナリストの屋良朝博氏は「集団的自衛権や辺野古基地建設は虚構の抑止力をキーワードに語られている」、ND事務局長で弁護士の猿田佐世氏は「沖縄が大きなまとまりで動こうとしている。その声をワシントンや国連に伝える必要がある」と訴えた。

■自衛隊・海保で十分尖閣防衛

 新外交イニシアティブ(ND)のシンポジウムは、安全保障の専門家3氏がパネル討議で議論を深めた。尖閣諸島の脅威を理由とした海兵隊必要論に対しては、自衛隊や海上保安庁の対応で十分であり、海兵隊の抑止力は必要ないとの指摘があった。

 元防衛官僚の柳沢氏は、尖閣と海兵隊の抑止力に言及。「上陸を阻止するのは海上保安庁、自衛隊の治安出動で十分間に合う。海上自衛官OBは『上陸されても艦砲射撃3発で解決するよ』と話している」と述べ、日本政府の取り組みで対処できると強調した。

 政府が辺野古移設の既定方針に固執する理由では「官僚時代、私は『日米同盟を維持することが最大の国益』と疑わず、イラクに自衛隊を派遣した」と述懐。政権交代のたびに大量の官僚がシンクタンクや大学に異動する米国と異なり、終身雇用の日本では政治に意見具申しづらい実態も説明した。

 半田氏は尖閣問題で「中国も悪いが、靖国神社に参拝して相手の怒りを駆り立てているのはどなたか。取材していると自衛官も『挑発を続けたら本当に偶発的な衝突が起きる』と心配している」と安倍晋三首相に抑制的な対応を求めた。

 屋良氏は靖国参拝に絡み「海兵隊はアジア太平洋地域で人道支援、災害救助訓練を続け、各国とネットワークを構築している。安全保障環境の悪化をしきりに主張する日本の首相こそが、海兵隊の努力を台無しにしている」と批判した。