この夏、記録的な豪雨による被害が全国各地で相次いだ。とりわけ広島市で起きた土砂災害は、いくつもの要素が重なって想像を超える惨事となった。

 31日現在、死者72人、行方不明者2人。今も体育館などの避難所では1000人以上の住民が不便で不安な日々を送っている。

 なぜ、これほどまで被害が拡大したのだろうか。

 今回の土砂災害は、住民が寝静まった未明に、1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降り続いたことによって起きた。避難しようにも、かえって危険な時間帯だ。

 一帯は花こう岩が風化してできた「まさ土」と呼ばれるもろい地質だという。そこに記録的な豪雨が襲い掛かり、巨大な岩を転がすほどの土石流が複数の斜面で同時に発生し、宅地開発でできた住宅をのみ込んだのである。

 被害が拡大した理由はそれだけではない。

 広島市は1999年6月にも梅雨前線による土砂災害に見舞われ、多数の死者を出している。土砂災害防止法はその時の教訓から制定された。だが、広島県は土砂災害危険箇所が3万カ所を超え、全国で最も多いにもかかわらず、同法に基づく土砂災害警戒区域の指定は不十分だった。

 どこがどのように危険かを住民に伝えるのは行政の重要な役割である。

 土砂災害から身を守るためには、自宅の周りが危険かどうかを行政情報によって確かめ、いざというときの対応を普段から確認しておくことが大切だ。

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 広島市での土砂災害では、警戒区域指定の作業が進んでいなかった上に、豪雨発生時の避難指示、避難勧告にも遅れがあった、と古屋圭司防災相は指摘する。

 7月に台風8号が沖縄を襲い特別警報が出たときにも、およそ59万人に避難勧告が出されたが、どう対応していいか分からなかったという住民が多かった。

 深夜、暴風雨の中を避難するのは危険だ。家にとどまった方が安全だと独自に判断する人もいるだろう。どのタイミングで避難勧告や避難指示を出すかは難しい。

 行政は住民の身を守ることを第一に考え、避難可能な段階で、早めの判断を下すべきだろう。

 行政が適切な判断を下すためには、気象予報の精度を高める取り組みも欠かせない。

予報が何度も狂い、行政の避難勧告や指示も空振りが続けば、制度の信頼性に傷がつき、住民は信じなくなる。

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 土砂災害防止法に基づく沖縄県の土砂災害危険箇所は1032カ所、警戒区域は797カ所。9月1日の防災の日に、まず自宅の周りの危険度をチェックしてみてはどうだろうか。

 地震、津波、台風、集中豪雨…。日本は世界でも有数の「災害大国」である。この自然条件から逃れることはできないが、行政と民間の連携によって被害を極小化することは可能なはずだ。

 自分の中の防災意識を高めることが、自分の身を守ることにつながる。