安倍政権の女性活用策のキャッチフレーズは「2030(にいまる・さんまる)」だ。2020年までに指導的地位に女性が占める割合を、少なくとも30%にする目標である。

 「隗(かい)より始めよ」ということだろう。第2次安倍改造内閣で、過去最多と並ぶ5人の女性閣僚が誕生した。

 閣僚ポストは全部で18。3割には少し届かないが、新たに女性政策を束ねる「女性活躍担当相」を設け、自民党の政調会長にも引き続き女性を起用するなど、積極的な姿勢をアピールする。

 人口の半分は女性なのだから、閣議メンバーの半分が女性であっても不思議ではない。しかし5人の女性閣僚の誕生に「人気取り」や「上げ底人事」という批判が出るのは、女性議員の層の薄さが根底にある。

 国会議員に占める女性の割合は衆院議員が8・1%、参院議員が16・1%。ジュネーブに本部がある列国議会同盟が5月時点で各国の下院議会(衆議院)における女性の割合を調べたところ、日本は189カ国中132位で、先進国の中で最低水準だった。 

 安倍政権が成長戦略で示す「2030」は、社会のあらゆる分野での数値目標だが、政界での実現はかなり厳しい。政治の世界における男性優位の風土は根強く、そもそも女性が候補になること自体難しいのだ。

 今回の女性閣僚の誕生が、強固な政界の構図を変える契機になるとしたら、意義は小さくない。

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 女性閣僚の起用によって、企業での女性幹部登用が進むかどうかを尋ねた、共同通信社の世論調査では、50・2%が「期待できない」と答え、「期待できる」の43・4%を上回った。

 5人の女性閣僚の中には、選択的夫婦別姓制度に反対するなど伝統的な家族観・結婚観を重視する議員もいる。波及効果への慎重な見方は、本当に女性の声を代弁し、社会進出を後押しするのか、しっかり見極めたいとの声と受け取れる。

 自民党の野田聖子衆院議員が総務会長時代に、女性政策の課題について、こう話していた。「障がいのある子を持つ私が仕事をできているのは、夫が仕事を休んでいるからだ。議員はある意味で管理職だから融通が利く部分がある。首相は、いびつな形で家庭を犠牲にしないと女性が働けない社会の構図を壊さないと女性を社会に引っ張り出せない」

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 安倍晋三首相は民間に対しても女性登用の目標設定を求めている。だが企業の管理職の割合は、ここ数年横ばいで取り組みは鈍い。

 「管理職なら残業は当たり前」「仕事に家庭を持ち込むな」という日本の企業文化に、女性たちはワークライフバランスで悩んでいるのだ。

 夫の家事・育児時間も極端に少なく、家事責任が女性に偏る現実もある。

 変わらなければならないのは働き方そのもので、女性の社会進出と同時に「男性の家庭進出」がなければ、女性が輝く社会の実現は掛け声倒れに終わる。