釣り鐘はカーンカーンと甲高く集落に響き渡り、高く掲げた鉦(かね)はホースの切れ端でジャーンジャーンジャーンと打ち鳴らされる。豊年祭で覚えたかねの原風景だ

 ▼ガスボンベを再利用した鐘はさび付き、お寺がならす除夜の鐘の重厚さにはほど遠い。けれど、高い音は祭りの高揚感を高めるのに一役買った。今も耳に残り、郷愁をそそる

 ▼聞いたことのない「万国津梁の鐘(旧首里城正殿鐘)」は、どんな響きをするのだろうか。台に置いて展示してきた県立博物館・美術館が、専門家に意見を聞き、展示方法を検討している

 ▼手始めに、おそらく全国でも類を見ないという「鐘の健康診断」で強度を調べるためにエックス線写真を撮った。慎重にことを進めているのは、国指定重要文化財というだけにとどまらないのだろう

 ▼館長の安里進さんは「巨鐘・万国津梁の鐘は、沖縄県民にとって魂のような文化財だ」(2013年本紙)と、端的に言い表している。胴体には琉球国が万国を懸け橋に交易で繁栄しているさまを刻んだ有名な碑文があり、沖縄戦をくぐった後も数寄な運命をたどった

 ▼戦で焼かれて黒くなり、銃弾を受け弱った556歳の胴体を本来の姿に戻すことが可能なら、励みに思う人も少なくないはずだ。ついて音が出せるなら、県民の耳に魂の響きが吹き込まれる。(与那嶺一枝)