通勤に利用しているバスの運転手が、しまくとぅばで乗客とあいさつを交わしていた。スマートフォン向け無料通信アプリ「LINE(ライン)」の沖縄方言スタンプが人気だ。企業や行政が、積極的にしまくとぅばを取り入れ、市町村での継承活動も盛んである。

 県が昨年実施した初の全県意識調査では、県民の8割がしまくとぅばに親しみを感じていると回答している。半面、若年層ほど使えない状況が顕著だった。例えば、日常的にしまくとぅばを「主に使う」と答えたのは、70代で39%だったのに対し、20代では2%、30代では3%にとどまった。

 この結果について県は「消滅の危機の実態が数値でも明らかになった」と分析する。研究者は、「このままでは消滅は時間の問題」と警鐘を鳴らしている。

 ユネスコではすでに2009年、世界で2500の言語が消滅の危機にあると指摘し、その中に奄美・琉球諸島で話されている琉球諸語も含まれると発表している。

 昨年は「しまくとぅば復興元年」といわれた。県は10年計画で、しまくとぅばを使う県民の割合を今より3割増やす目標を盛り込んだ普及推進計画を策定した。

 NPO法人など民間9団体で組織する「しまくとぅば連絡協議会」が設立され、シンポジウムを開催するなど、新たな動きが相次いだ。

 県民のしまくとぅばに対する意識が、より肯定的になっていることは確かだ。ただ、幅広い年齢層が日常生活で使うには至っていない。

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 しまくとぅばの復興は、自己決定権の獲得やアイデンティティーのよりどころとしての価値を持つことが再認識されている。国際社会の動きにも注目したい。

 国連の委員会が08年「琉球の子どもたちが民族の言語、文化について習得できるよう十分な機会を与え、通常の教育課程の中に琉球・沖縄の文化に関する教育を導入すべきだ」と日本政府に勧告した。

 先月、スイスで開かれた国連の人種差別撤廃委員会でも、琉球語を消滅の危機から守る施策を加速し、教科書に沖縄の歴史や文化を盛り込むよう日本政府に求めた。

 県内で17日から3日間、消滅の危機に瀕(ひん)した言語の記録や保存、復興を支援している危機言語財団の第18回年次大会が開催されている。世界の危機言語の復興に向けての取り組みなどを通して、琉球諸語の保存継承策を見いだせるよう期待したい。

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 「沖縄文化の基層であるしまくとぅばが消滅すると、県民の郷土愛も失われ、沖縄文化の衰退へとつながる」。県は、普及推進計画でこう指摘している。しまくとぅば連絡協議会は県などに対し、新たな条例制定などスローガンにとどまらない実効性ある施策の推進を求めている。

 復興への機運は高まりつつある。次のステップは、どう普及させるかだ。多様性に富む各地域のしまくとぅばの保存継承、表記法などの課題はまだまだ残されている。「しまくとぅばの日」にあらためて考えたい。