【那覇】全日本吹奏楽コンクールに通算30回出場した宜野座村出身の吹奏楽指導者、屋比久勲さん(75)=福岡県在住=が指揮を務める記念演奏会が14日、那覇市民会館大ホールであった。指導歴50年の間に赴任した沖縄、福岡、鹿児島の計7校の教え子ら85人が、アンコールを含め11曲を熱演。約1400人の聴衆はまろやかで重厚な「屋比久サウンド」に酔いしれ、偉業を祝福した。(新垣綾子)

観客席に向き、両手をあげてフィナーレを盛り上げる屋比久勲さん=那覇市民会館

 教え子たちが開催に奔走した晴れ舞台に、屋比久さんは「心がジンときている」と感謝し「これからも沖縄の中学、高校に出向いて少しでも恩返ししたい」と古里での音楽指導に意欲をみせた。

 1部は沖縄が本土復帰した1972年、33歳の屋比久さんが真和志中を県内で初めて全国大会へ導き、金賞に輝いた際の課題曲「明日に向かって」など5曲で構成。古新聞や空き缶を集めて楽器代を稼いだ新米時代の苦労話も披露した。

 名渡山愛文さんや﨑山用豊さん、富原守哉さんら沖縄吹奏楽の創成期を支えた重鎮も駆けつけた。元中学校指導者で、かつて屋比久さんと「2強時代」を築いた久高友之さんは「彼の音を聞いて勉強した。彼が全国初出場してから沖縄の音楽が勢いづいた」。福岡、鹿児島の長い単身赴任を沖縄から見守り続けた妻ヒサ子さんは「これが(屋比久家の)正常な生活」と会場の笑いを誘い、今後も福岡県太宰府市の九州情報大で指導を続ける夫へ「目指したなら、前に進んでほしい」とエールを送った。

 教え子でもある声楽家の平山留美子さんや、女声合唱団を率いる島袋節子さんと「涙そうそう」や「芭蕉布」で共演する場面もあった。終盤の目玉は、ワーグナー作曲「エルザの大聖堂への行列」。シンプルな旋律が重なり合い高揚感が増す名曲は、音質にこだわる屋比久さんが基礎練習で多用する定番だ。行進曲「星条旗よ永遠なれ」でフィナーレを迎えると、会場の興奮は最高潮に達した。

 演奏を聴いた那覇高校3年の嘉手苅萌さん(17)は「やっぱり『エルザ』が最高だった。金管楽器が加わり、シンバルが鳴り響くクライマックスは鳥肌が立った」と声を弾ませた。