連日、デング熱患者のニュースが報道され、皆さまの関心も高いと思います。

 デング熱は蚊が媒介するウイルス感染症としては世界的に最も多い病気です。国内では、ヒトスジシマカが媒介します。アジア、中南米、アフリカなど熱帯・亜熱帯地域に広くみられ、この50年間で30倍も感染者数が増加し、毎年1億人が感染しています。

 沖縄県では、過去に数万人規模の大きな流行が何度も見られましたが、1955年を最後に海外感染以外の患者は確認されていません。日本本土においても40年代の大流行以降は、国内感染例はありませんでした。

 しかしながら流行地域からの入国者が年間250例程度デング熱を発症していることから、日本における再流行の危険性は以前より指摘されていました。今回の代々木公園を発端とした、海外渡航歴のない者における感染拡大は、それをはからずも裏付ける結果となりました。

 蚊に刺されて(感染)から発症するまでの期間(潜伏期)は、多くは4~7日、最長で14日間です。急激な発熱(38~40度)で始まり、頭痛、関節痛、筋肉痛、眼の奥の痛みを伴います。発熱は4~8日間継続し、解熱時に発疹が、胸や四肢に広がることがあります。

 通常これらの症状は1~2週で軽快し、後遺症を伴うことはありません。しかしながら1%程度の患者さんが重症化することがあります。過去にデング熱感染の経験があり、再感染した患者、15歳以下の若年者(特に乳幼児)、または妊婦です。私が経験した重症の患者さんは、鼻出血と胸や背中に出血斑が認められ血圧も低下し、長期の治療が必要となりました。この患者さんを詳しく調べると、過去に2度のデング熱に感染していたことが判明しました。

 現在、デング熱に対するワクチンや有効な治療薬は開発されていません。簡単ではありませんが、蚊に刺されないよう工夫すること、蚊の幼虫(ボウフラ)の繁殖を阻止することが基本です。

 流行地域では国を挙げて蚊の発生源を絶つ努力をしています。シンガポールやブラジルでは自宅敷地内でボウフラが見つかると所有者に高額の罰金が科されます。一方、デング熱がこれまで見られなかったフランスでは、4年前に初めて国内感染例が報告され、残念ながら定着しました。過去に大流行のあった沖縄県は今こそ、防蚊対策に関するインフラの整備と県民意識の醸成が重要と思われます。(健山正男・琉球大学医学部附属病院)