116年前の法律が今を生きる人を苦しめている。出生以来初めての戸籍を得るため埼玉県の女性が起こした裁判で、家裁は訴えを認めた(19日30面)

 ▼女性は32年前、前夫の暴力で別居中の母親と、別の男性の間に生まれた。「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子」とする民法の下で出生届を出せば前夫の子と戸籍登録される。当時それを拒んだ母親の心情は察するに余りある

 ▼いわゆる民法の「300日規定」による無戸籍児である。家族の在り方が多様化し、DNA鑑定で親子関係が分かる現代。3千人の無戸籍児が生まれているという推計も

 ▼他方、日弁連は昨年、夫と死別や離婚した母親に適用される税法の「寡婦控除」が非婚の母親に適用されないのは人権侵害と報告した。300日規定と寡婦控除、問題の根は同じだが法改正は進まない

 ▼無戸籍問題では2007年、第1次安倍内閣が結成したプロジェクトチームが改正法案の国会提出を見送った。翌年法務省は通達による救済策を示したが、前述の女性によれば届いているとは言い難い

 ▼自治体で広がりつつある寡婦控除の「みなし適用」も根本解決にはならないとして法改正を求める声が上がっている。声に応えないなら、国民を苦しめているのは古い法律ではなく政治家だと言わざるをえない。(黒島美奈子)