沖縄の「顔」である那覇市の国際通り。その中央にそびえ建ち、シンボルといわれた沖縄三越が21日、57年の歴史に幕を下ろした。何世代にもわたり、県民に親しまれてきた老舗百貨店の最後の1時間を見つめた。(新垣卓也、矢島大輔)

沖縄三越の閉店セレモニー後、正面入り口を見つめる買い物客ら=21日午後7時50分ごろ、那覇市牧志

沖縄三越の閉店セレモニーに詰め掛けた買い物客ら=21日午後7時50分ごろ、那覇市牧志

沖縄三越の閉店セレモニー後、正面入り口を見つめる買い物客ら=21日午後7時50分ごろ、那覇市牧志 沖縄三越の閉店セレモニーに詰め掛けた買い物客ら=21日午後7時50分ごろ、那覇市牧志

 ■午後6時35分 「店内大変暑くなっております。体調の悪い方はいませんか」。額に汗を浮かべた男性従業員が連呼する。エアコンの涼風を上回る熱気。午後7時の閉店を告げるアナウンスとは逆に、店内はぎりぎりまでセール品の吟味を重ねる人、なじみの従業員と別れを惜しむ人でにぎわう。

 ■午後6時45分 薄闇に包まれた屋上。「ここに小さな遊園地があって、ゴーカートで遊びました」。3日連続で訪れた那覇市の会社員、金城一史さん(46)は言った。今帰仁村にいた当時、両親と来る三越は都会の象徴だった。「寂しい気持ちと、時代の流れで仕方のない気持ちと…。でもやっぱり、寂しいかな」

 ■午後6時51分 レストランがある7階。「最後にもう一回、ハンバーグが食べたかったな」。那覇市の垣花正人さん(55)はラストオーダーに間に合わず、名残惜しそうに言った。宮古島にいた小学生のころ、本島へ出張する父に連れられて来た。「年に1度、三越でハンバーグを食べるのが楽しみだった」

 ■午後7時5分 閉店時間が過ぎても、店内には大勢の客が残っていた。3階の女性用トイレ。那覇市の粟国睦子さん(30)は高校生の時、「三越のトイレがおしゃれだ」とのうわさを耳にしてよく訪れた。大きな鏡が3枚並ぶ化粧室に乙女心がくすぐられたのを覚えている。記念に写真を撮りたかったが、人の多さに諦めた。「最終日に活気があるのが少し悲しい」

 ■午後7時39分 最後の客となった那覇市の赤嶺みちえさん(56)が1階に集まった全従業員の拍手を浴びながら外に出てきた。大越百貨店時代からの常連客。姉は4階の婦人服売り場で働く。「今日は買い物だけでなく、姉にお疲れを言いました」

 ■午後7時42分 正面入り口前で、沖縄三越の杉山潤治社長が「またどうぞお越しくださいと言えないのがつらい」とあいさつ。従業員、常連客が涙ぐんだ。

 ■午後7時50分 赤い筆字で「越」と書かれた幕がぶら下がったシャッターが完全に閉まった。沿道には人があふれ、カメラのフラッシュで辺りはしばらく明るかった。

 ■午後8時12分 三越向かいの建物に63年間住む友寄隆輝さん(65)は「さみしくなるね。いつもここで見ていたから」。妻の幸枝さん(62)は「食料品も婦人服も、本当にいい品物ばかりだった。これからどうしようかね」と言った。