「足が切れたタコのウインナーと、耳が折れたウサギのリンゴが転がっててねぇ」。まな板を見た男性が、笑いこけながら目尻に涙をためていた

▼ひとり親世帯のお父さんが早朝、不器用な手つきで包丁を握って子どもたちのために弁当を作り、慌ただしく自宅を後にする。まぶたに浮かぶまな板の上の残骸が、父親の愛情や子育ての大変さを物語った

▼母子寡婦福祉法改正に伴い、関連する五つの県条例に「父子」の文字を加えた改正案が、あすの県議会で可決される見通しだ。10月1日から施行される

▼改正で、母子世帯に限られていた修学資金などの無利子・低金利融資の対象が父子世帯にも広がる。福祉保健所に配置している支援員は「母子・父子自立支援員」となる

▼長らく、父子世帯は数が少なく経済的にも母子世帯より恵まれているとして、公的支援が受けられなかった。しかし、2013年度県調査では、世帯数が約5千に増えた。平均年収は母子より54万円多いだけで、209万円にとどまっている。不安定な雇用を背景に、どちらも「家計(生活費)」が最大の悩みだ

▼ひとり親のがんばりを、公的に支える仕組みがもっとあっていい。日本は子育てに公金を使わない国だが、親はぎりぎりのところで踏ん張っている。タコウインナーの努力は、報われなければならない。(与那嶺一枝)