昭和天皇の生涯の動静をまとめた「昭和天皇実録」が先日、公表された。まだ一部しか見ていないが、沖縄関係の新たな事実を知りたかった一人としては、不思議な書物との感じが拭えない

 ▼沖縄の米軍占領を望んだ「天皇メッセージ」にしても、天皇の言葉ではなく資料を引用する形で「正史」としている。ほかでも、肉声はほとんどぼかして記されているようだ

 ▼歴史書でも、物語でもなければ、評伝でもない。動静を網羅的に記すだけ。「通説を覆すような記述はない」。多くの専門家が指摘する物足りなさだが、記述の仕方にも訴えの遠因がある

 ▼二つの大戦を経験し、激動の時代を生きてきた日本人の心中に存在感を残す昭和天皇である。今後、一般向けに刊行されるが、研究者でなくても肩透かしを食らったような錯覚を覚える人も多いかもしれない

 ▼公開の仕方にも違和感があった。公表前に資料配布されたのは、宮内庁記者会の加盟社のみ。多くの新聞社は情報公開請求によらないと入手できない。どんなタイミングで請求すればいいのか、提供時期も直前にしか知らされず、妙に敷居の高さを感じた

 ▼外交やジャーナリズムの世界で歴史をめぐる論議が多い状況も影響しているのだろう。「24年もかけた官製正史とは」。と、ページを繰りながら引っかかっている。(宮城栄作)