巨大台風、集中豪雨、海面上昇-。世界の科学者は、これら気象災害が、地球温暖化の進行によってさらに深刻化すると警告している。もはや温暖化は、人類にとって待ったなしの「いまそこにある危機」である。

 ニューヨークの国連本部で開かれた気候変動サミットは、こうした危機感が背景にあったのだろう。参加した120カ国以上の首脳らが、地球温暖化対策の国際的枠組みについて、来年3月までに2020年以降の温室効果ガス排出量の削減目標を示すことを確認した。

 京都議定書に続く新たな枠組みは、途上国を含む全ての国が参加する。各国が自主的に設定した目標を事前に相互検証できる仕組みになる方向だ。15年末にパリで開かれる気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)での採択を目指している。

 サミットは、新枠組みづくりに弾みをつけようと国連の潘基文(バンキムン)事務総長が呼び掛けた。多くの首脳が合意に向けた意思を表明したことの意味は大きい。潘氏は「今日は歴史的な日だ」と、称賛した。

 とりわけ、温室効果ガスの2大排出国である米国と中国が、従来の消極姿勢から転換し、取り組みに前向きな姿勢を示したのは、大きな前進といえる。

 オバマ米大統領は、米中両国に温暖化対策を主導する特別な責任があると強調した。世界全体の排出量の4割以上を占める2大国の責任は重い。危機を回避できる実効性のある枠組みづくりに全力を挙げてもらいたい。

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 サミットでは、化石燃料から再生可能エネルギーへの100%転換を表明する国も相次いだ。新枠組み合意に向けた機運が高まっているのは確かだ。その中で日本の存在感は薄かった。

 安倍晋三首相は、人材育成など途上国への支援強化を表明したものの、日本の目標提出の時期や新たな削減策については何一つ示せなかった。原発再稼働を前提にしたエネルギー基本計画の下で、将来の電源構成比率が決められず、削減目標の国内議論が進んでいないからだ。

 菅義偉官房長官は、新たな削減目標案について10月に有識者による審議会を設置し、検討を始める方針を明らかにした。しかし、福島第1原発事故を教訓にすれば、原発頼みの温暖化対策が現実的でないのは明らかだ。省エネや再生可能エネルギー導入などを促進し、脱原発の政策を進めるべきだ。

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 科学者らでつくる国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、温暖化が進めば今世紀末に地球の平均気温は最大4・8度、海面水位は最大82センチ上昇すると予測している。

 国内でも感染が広がっているデング熱に関し世界保健機関(WHO)は、温暖化でウイルスを媒介する蚊の分布域が北上し、世界人口の40%以上に感染のリスクがあると警告した。温暖化は、人間の安全保障の危機でもある。世界第5位の排出国である日本の対応が遅れることは国際社会において許されない。