「人の役に立ちたい」という高い志を抱いて介護の資格を取り、意欲をもって働き始めたのに、厳しい労働環境から仕事を辞め、転職する人が多い。

 厚生労働省所管の公益財団法人「介護労働安定センター」が実施した2013年度介護労働実態調査によると、高齢者の家を訪ねる訪問介護員や、事業所で働く介護職員の年間の離職率が16・6%に上った。

 前年度よりわずかながら改善したものの、ほかの産業と比べ高い状態が続いている。

 複数回答で聞いた、働く上での悩みや不安では「人手が足りない」「仕事内容のわりに賃金が低い」という声のほか、「業務に対する社会的評価が低い」との不満もあった。

 一方、ひと月の平均賃金は訪問介護員が約18万8千円、介護職員が約19万5千円。全産業の平均を約10万円も下回っている。

 離職の背景にあるのは低い賃金水準ときつい仕事内容だ。平均の勤続年数も5年ほどと短く、長く働き続けることが困難であることを示す。

 県内のデータに目を移すと、その数値はさらに厳しい。離職率は17・2%で、介護職員の平均賃金は約17万円。実に離職者の9割近くが、3年もたたないうちの早期離職である。

 お年寄りの人生を支える働きがいのある仕事だと思って就職したものの、頑張りすぎて燃え尽きてしまう状況が浮かび上がる。

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 介護される側の人間が爆発的に増え、高齢化の問題が深刻化するのが「2025年問題」だ。団塊の世代が75歳に達する25年には、国民の5人に1人が75歳以上となる。

 年を取ると肉体的にどうにもならないことが多くなり、要介護となるリスクが高まる。高齢者の4人に1人が認知症とその予備軍という時代にあって、認知症患者も増加するだろう。1人暮らしや高齢者夫婦のみの世帯も増えていく。

 離職率の高さが業界全体の人材不足を招き、国内の介護労働者は現在約150万人で、担い手確保に四苦八苦している。このままだと、25年には100万人も足りなくなるという。

 政府が構築を目指す「地域包括ケアシステム」は、重い要介護状態になっても、地域で最期まで自分らしく暮らす仕組みだ。しかし医療や介護サービスが行き届かなければ「住み慣れたわが家」には居続けられない。

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 誰もが介護予備軍となる長寿社会。介護の担い手に求めるのは、お年寄りの尊厳を大切にしたケアだが、担い手の誇りや生活もまた守られなければならない。

 来年度の介護報酬改定に向けて、厚労省の審議会で議論が始まっている。専門職である介護職の賃金アップなど待遇改善の方向性を示すべきだ。 

 「量」の確保と同時に、「質」を高めていく施策も必要である。高齢者の介護という尊い仕事へのやりがいが継続する教育や研修システムの充実も求めたい。