日本新聞協会は1日、第21回新聞配達に関するエッセーコンテストの受賞作品を発表した。大学生・社会人部門で、浦添市の主婦、新垣夕希さん(33)が入選した。20代のころ、長時間残業で夜明け前に帰宅した際、寝静まった住民を足音で起こさないよう、草履を脱いで新聞を配る女性配達員の姿に胸を打たれたエピソードをつづった。

 当時デザイン関係の会社に入りたてだった新垣さんは「仕事で気持ちが極限状態の時、思いやりや優しさに気付かされ、勇気づけられた。人のせいにせず、周りとコミュニケーションを取ろうと思い直した」と当時の心境を振り返った。

 その後結婚し、長女美羽(みわ)ちゃん(1)に恵まれた。

 子育てに追われ、優しい気持ちを忘れがちになることもあるが、「たまにあの光景を思い出すと、家族への感謝の心を持とうと思える」と話した。

 コンテストは全国から3478編の応募があり、「大学生・社会人」「中学生・高校生」「小学生」の3部門でそれぞれ10編が入賞した。

■眠り妨げないよう、裸足で配達

優しい島ぞうり

 二十代の頃、仕事が忙しく、連日残業で家路につくのは、たいてい夜明け前だった。「なぜ、自分ばかりが忙しい…」。頭の中は、いつも会社や周囲の人に対する不平不満でいっぱいだった。深夜、静まり返ったマンションの廊下に自分の靴音がカツーン、カツーンと異様なほど大きく響き渡る。

 ふと見ると、廊下の隅に「島ぞうり」がちょこんと置かれていた。「おはようございます」。ふいに背後から声を掛けられ、驚いて振り向くと、新聞の束を抱えた初老の女性が立っていた。「遅くまでお疲れさまです」。笑顔でそう言うと、彼女は小走りに去っていった。静まり返った廊下を走っているのに靴音がしない。あの島ぞうりの持ち主は彼女だと気付いた。彼女は寝ている住人の眠りを靴音で妨げないように、裸足で新聞配達をしていたのだ。

 自分のことに精いっぱいで、平気で靴音を鳴らして歩いていた自分が情けなくなった。どんなに疲れていても、思いやりの気持ちはなくしたくないと、心から思った。