一国二制度の「高度な自治」が認められている香港で、次期行政長官選挙の制度改革案に反発する市民・学生らが、大規模な抗議行動を続けている。

 1日は、中国の建国記念日にあたる国慶節。市民・学生らは国慶節を祝う式典会場周辺に押し寄せ、「香港に真の普通選挙を」と書いた横断幕を掲げ抗議を繰り返した。

 市民・学生らの占拠拠点は、行動開始を宣言した9月28日以降、日を追うごとに広がり、九竜地区を含め4カ所に拡大したという。

 行政長官は香港特別行政区のトップ。これまでは1200人の選挙委員会メンバーによる間接選挙で選んでいた。全国人民代表大会(全人代)常務委員会は8月末、2017年に実施される行政長官選挙の制度改革案を発表し、普通選挙を導入することを明らかにした。

 間接選挙をやめ、1人1票の普通選挙に改めるということは、間接選挙に比べ大きな前進のように見える。しかし、中身は業界団体などから選ばれた指名委員会があらかじめ候補者を2~3人に絞るという仕組みで、誰でも立候補できるというわけではない。

 指名委員会のメンバー選びに中国側の意向が強く働くのは確実で、民主派は事実上、立候補すらできない-と学生らは主張する。香港の「高度な自治」の内実が揺らいでいるのである。

 民主派が「真の普通選挙」を求めるのは当然の成り行きだ。これに強権的に対処するようなことがあってはならない。

    ■    ■

 1997年の香港返還にあたって香港特別行政区基本法が制定され、「高度な自治」

の名の下で一国二制度の運用が開始された。

 今回の行政長官選挙をめぐる大規模な抗議行動で浮き彫りになったのは、一国二制度に基づく高度な自治が具体的に何を指すのかがあいまいで、中国政府の解釈と運用次第では、その中身が空洞化する可能性があることだ。

 習近平国家主席は最近、「一国二制度」による平和的な統一が中台統一の最も良い方法だと語ったといわれる(9月27日付朝日新聞)。

 行政長官選挙問題に対する台湾の関心は高い。中国政府の今後の対応によっては、中国政府に対する台湾の人々の心理的な警戒心を高める結果にもなりかねない。

 実際、台湾では3月、中国とのサービス貿易協定に反発する学生らが、23日間にわたって立法院(国会に相当)を占拠したばかりである。

    ■    ■

 中国政府も香港政府も今のところ、制度改革案を撤回する気はなさそうだ。香港政府の梁振英行政長官は「全人代の決定を受け入れることが対話の前提」だと主張する。

 対話を求める市民・学生にとって、制度改革案の丸のみは受け入れがたく、道路占拠や抗議行動が長期化するおそれもある。

 こうした事態は、国内治安対策の観点から言論や思想を統制し、民主化の動きを上から力で抑え込むだけでは解決しない。慎重な対応を中国政府に求めたい。