結局は一部の大企業のみが潤っているだけで、中小・零細企業や地方、家計には、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の矢は届いていないのではないか-。

 直近の各種経済指標から浮かび上がるのは、アベノミクス効果の偏りと景気回復の鈍さだ。

 日銀が発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)は、景気の目安とされる大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス13と前回6月から1ポイント上昇した。小幅ではあるが2四半期(半年)ぶりに改善し、景況感の底堅さをみせた。

 一方、大企業非製造業は6ポイント下落してプラス13となり、2四半期連続で悪化した。

 中小企業は製造業、非製造業とも前回調査より悪化している。

 大企業製造業の景況感が改善したといっても手放しでは喜べない。一部輸出企業の外貨建て利益が円換算で拡大した、という円安効果の要素が強いからだ。

 生産拠点の海外移転が進む現状では、円安が必ずしも輸出の増加に結び付くとは限らず、国内景気全体をけん引する力は弱い。実際に8月の輸出額は前年同月比で1・3%減と低迷した。

 円安は、むしろ原材料や原油・ガスの輸入コストを押し上げ、中小企業に厳しい経営を強いている。

 今後の見通しについても、3カ月後の景況感は大企業の製造業が横ばい、非製造業が1ポイント上昇にとどまった。企業は慎重な姿勢を維持したままだ。

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 気になるのは、個人消費の冷え込みが続いていることだ。総務省の家計調査をみると、8月の1世帯当たり消費支出は、前年同月比4・7%減と、4月以降5カ月連続のマイナスとなった。

 統計上の給与は増えた。8月の1人当たり現金給与総額は前年同月比で1・4%増と6カ月連続して前年を上回った。しかし、物価上昇分を差し引くと、実質賃金指数は2・6%減と14カ月連続のマイナスだ。

 個人の景況感などを尋ねる日銀の生活意識アンケート(9月調査)では、1年前に比べ現在の暮らし向きに「ゆとりがなくなってきた」とする回答が48・5%とほぼ半数に達した。「物価上昇」「収入減少」がその理由だ。

 消費税増税と、円安による食品などの値上がりが、消費者に重くのしかかっている実態が見て取れる。

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 日銀短観で、県内景況感は一部に消費税増税の反動減が残るものの、建設や観光を中心に高水準を維持した。

 8月の有効求人倍率は0・74倍と、本土復帰以降の最高値を3カ月連続で更新した。だが、内実に目を向ければ、求人増を押し上げているのは非正規雇用であり、雇用の質改善にはほど遠い。賃金の伸びも鈍く、物価変動を加味すればマイナス幅はむしろ拡大するという。

 大企業を中心に春闘の賃上げ率が15年ぶりの高水準を示した一方、地方では「賃下げ」の実感すら広がる。これもアベノミクスが生んだ「二極化」である。