日差しが和らぎ秋の気配を感じると運動会シーズンかと連想する。沖縄では近年、学力向上対策の一環で時季をずらす学校もあると聞くが、10月はまだ集中月間であるだろう

▼この学校では例年通りの運動会とはならないかもしれない。むごたらしい遺体で見つかった生田美玲さん(6)が通っていた神戸市の小学校である

▼「運動会ではダンスを頑張ります」。美玲さんの2学期の目標だったという。あの小さな体で、練習に張り切る姿が目に浮かぶと、親でなくとも悲しみが深まり、犯人への怒りが膨らむ

▼学校は一端、運動会の取りやめを決めた。美玲さんの母親が「子どもたちのためにやってください」と泣きながら願い、4日に開かれることになったという。当日、児童らは、天上の友との思い出を胸に、一生懸命に駆け、演技を見せてくれることだろう

▼中桐雅夫さんの詩「母子草」の一節。「誰でも経験があるだろう、運動会で/子供たちが懸命に走っているのを見ると/目がうるむのだ、自分の子でもないのに…」と。詩集『会社の人事』(晶文社)から引いた

▼全力で走る無垢(むく)な姿が涙腺を緩ませるのか、その目の潤いに共感する人は多かろう。年度も折り返し、これからせわしくなり始める。運動会で子どもの成長と純粋な頑張りを見て、心を洗ってみたくなる秋である。(宮城栄作)