先日、日本渡航医学会に出席しました。海外渡航者が年間1700万人を超える時代です。さらに団塊世代の定年退職後の海外旅行、長期滞在、海外移住が多くなると思われます。若い人は海外勤務、語学研修旅行、ワーキングホリデーなどで国外に出る機会が増えます。今回は海外での病気に対する注意、ワクチン接種の必要性について一緒に考えてみましょう。

 57歳の女性。海外公演のためベトナムに1週間滞在しました。帰国後、咳が出始め1カ月以上も続きました。発作性けいれん性で検査の結果百日咳と診断されました。百日咳はワクチン接種後10年すると抗体価が低下します。日本では局地的に散発している状態ですが、国外ではまだまだ流行しています。

 次は66歳の男性。タイで長期滞在を繰り返しています。滞在中、頭部に裂傷を受けました。大事には至りませんでしたが、もし傷口が汚染された場合は破傷風の発症の可能性があります。わが国でも年間60~100人が発症しており死亡率の高い疾患です。破傷風の抗毒素は10年すると効果がなくなります。30歳以上の方は再接種が必要です。

 インフルエンザは熱帯地方では年中流行しています。フィリピンのマニラ日本人診療所の報告では流行時期は雨季の8~9月でした。この時期マニラに旅行する人は予防接種時期をそれに合わせる必要があります。

 インドはヒンズー教の習慣により、人間の生活圏から動物が排除されてなく、衛生環境が悪いようです。そのためA・B型肝炎、腸チフス、破傷風、狂犬病に対するワクチン接種が必要です。またマラリアやデング熱を媒介する蚊に刺されないよう虫よけ対策も必須です。

 海外旅行での感染症対策は、まれだが感染すると死亡率の高い病気はできるだけワクチンで予防することです。例えば狂犬病、破傷風、日本脳炎(南アジア、東南アジア、東アジアのアジアモンスーン地帯で広く分布)、黄熱病、髄膜炎(アフリカの髄膜炎ベルトで多発)などがこれにあたります。滞在する国と地域の特性を考え、ワクチンを選択する必要があります。

 一般的に海外で必要なワクチンは百日咳、ジフテリアに対するものでDPTの接種が望まれます。またアジアの開発途上国に出かける場合はA・B型肝炎の接種がお勧めです。麻疹、風疹、水痘、ムンプスは抗体検査を行い免疫のない疾患に対してワクチン接種をしましょう。(比嘉耕一・ひがハートクリニック)