宮古の伝統行事「パーントゥ」をめぐって、一部の観光客から苦情が寄せられ、地元が対応に苦慮している。

 祭祀(さいし)の由来や目的を知らずに訪れた人たちが「服を汚された」と怒るのは筋違いだが、一時は中止も検討されたという。トラブルが地元の人たちを萎縮させないか心配だ。

 仮面を着け、つる草をまとい、泥を塗りたくった異形の神が、集落内を暴れ回るパーントゥは、宮古島市の平良島尻に伝わる年中行事である。旧上野村野原のパーントゥとともに国の重要無形民俗文化財に指定されている。

 新築の家に泥をペタペタ塗りたくったり、赤ちゃんの額に泥を押しつけたり、道行く人を泥まみれにするというのは、県民にはおなじみの光景だ。泥だらけになっても笑顔が広がるのは、厄を払い福をもたらす祭祀として、生活に根付いているからである。

 この伝統の手法に、数年前から苦情が寄せられるようになった。「服を汚された」「抱きつかれた」といった声のほか、怒った男性がパーントゥに暴行を加える騒ぎも起きている。

 今月3、4日にあった祭祀では、青年たちが扮(ふん)するパーントゥの周囲に複数の付添人を配置。観光客が大挙して押し掛けないよう開催日を直前まで知らせない窮余の策を講じた。

 宮古島観光協会も積極的に告知はせず、問い合わせがあった場合だけ「汚れてもいい服で」と念を押した。

 それでも当日、泥を塗られ不満を口にする観光客がいたという。  

    ■    ■

 沖縄の特色ある歴史や信仰への理解不足から生じるトラブルは、実は古くて新しい問題である。  

 1966年、イザイホー取材のため沖縄を訪れた芸術家の岡本太郎が、久高島の「後生(ぐそー)」と呼ばれる風葬の地に立ち入り、写真を撮影したことは、いまだに取り上げられる。

 1年前には、世界遺産に登録されている南城市の斎場御嶽(せーふぁうたき)を男子禁制にしようとのニュースが話題になった。もともと御嶽は男子禁制の空間で、それを市が復活させようとの話には驚いたものの、マナーの悪い観光客が聖域としての雰囲気を壊していることなどへの対処だった。

 世界が認めた遺産の聖域性の保存と観光の両立をどう図るか、という問題提起でもあったのだ。

    ■    ■

 パーントゥについて、宮古郷土史研究会の下地和宏会長は「物見遊山に出掛けることと、行事に参加することは違う。祭りの主体は島尻の人たちであり、見学者はそこのルールに従うべきだ」と訪れる側の覚悟を促す。

 そもそも島尻のパーントゥは観光客用の祭りではない。行事を大切にしてきた地元の意向を受け、大々的に宣伝するのを控えてきた経緯もある。

 トラブル防止のため、祭祀の意味を理解してもらう取り組みも必要だが、それ以前に、観光客には異文化に接する際の謙虚さと礼儀作法を身に付けてほしい。