秋の食べ物といえばサンマを思い浮かべる人は多かろう。味わう時たまに、70歳の父親が話していたのを思い出す。「若いころはサンマなんか食べたことがなかった」

▼物流が脆弱(ぜいじゃく)で、家庭に冷蔵庫も普及していないころのことだろう。食卓に並ぶことがない食材だったという

▼今は100円も出せば買える時代である。経済成長だけでなく、青色発光ダイオード(LED)のサンマ漁への導入も、旬の楽しみに貢献している。集魚灯に使うと、白熱灯に比べ効率的に魚をおびき寄せられるため、漁果が上がったという

▼その青色LEDを発明した日本人3人に、ノーベル物理学賞が贈られる。世界の科学者が青い光の開発にしのぎを削り、多くが手を引いていく中で、地道に研究を続けた

▼開発した赤崎勇さんは「やりたい研究なら続けられる」、教え子の天野浩さんも「必ずできるとの信念があればあとは諦めないことだ」と語っていた。量産技術を開発した中村修二さんは、特許権をめぐる所属企業との苦い思い出をバネに研究を続けた。執念を光源として保って暗がりを進み、鮮やかに輝かせた受賞であろう

▼赤、緑に青の光がそろって初めて明るい白色光ができ、生活に恩恵をもたらす。3者一体の成果は、論文不正問題で動揺した科学界と、世相をも明るく照らした。(宮城栄作)