2012年にイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」の銃撃で重傷を負いながらも女子教育の権利を訴え続けている、パキスタンの少女、マララ・ユスフザイさん(17)=英国在住=に、ことしのノーベル平和賞が授与されることになった。ノーベル賞全6部門を通じて最年少の受賞者となる。

 児童労働問題に取り組むインドの非政府組織(NGO)代表、カイラシュ・サトヤルティさん(60)も受賞が決まった。

 「銃弾が私たちを黙らせると思うのは間違いだ。ペンは剣より強い。1冊の本、1本のペンが世界を変えられる」

 生死の境をさまよい奇跡的に回復した後も、ひるむことなく信念を訴え続けてきたマララさん。13年7月に米ニューヨークの国連本部の演壇に立ち、あどけなさが残る表情ながら毅然(きぜん)とした口調で、各国に支援を訴えた姿が印象深い。

 その活動は、貧困や性差別、戦争などで学校に通えない環境にいる世界の子どもたちを勇気づけ、希望を与えた。同時に日本を含む国際社会に理解を広げ、支援を促した。

 サトヤルティさんも、平和的な抗議活動で児童労働や搾取に苦しむ6万人超の子どもたちを救出してきた。

 ノーベル賞委員会は、2人への授賞理由を「子どもや若者の抑圧への抵抗、全ての子どもが教育を受ける権利に向けた努力」と説明し、高く評価した。

 2人の活動をたたえるとともに、受賞を共に喜びたい。

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 ノーベル平和賞には、その時々の世界情勢を背景にした政治的メッセージが透けて見える。

 これまで論議を呼ぶ選考結果もあったが、2人はまさに平和賞にふさわしい。とりわけマララさんへの授与は、女性や子どもの生命や教育を脅かす勢力の台頭に対し、許さぬ姿勢を明確にしたものといえよう。

 ナイジェリア北東部ではことし、武装集団が学校に押し入り200人以上の女子生徒を連れ去る事件が起きた。マララさんの母国では現在も、武装勢力による学校爆破が発生しているという。こうした卑劣な行為は、断じて許されない。

 一方、マララさんがあらためて注目されることで、身に危険が及ぶことはないか心配だ。再び標的にならぬよう、マララさんの勇気に寄り添い、守り抜かなければならない。

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 今回は受賞を逃したものの、ノルウェーの民間研究機関の事前予想では、戦争放棄をうたった「憲法9条を保持してきた日本国民」が最有力候補に挙げられ、注目を集めた。

 神奈川県座間市に住む2児の母親(37)のアイデアが共感を呼び、賛同した市民による実行委員会が発足した。署名活動に協力する団体は全国に広がった。

 活動が支持を得たのは、逆に憲法9条の理念が危機的状況にある事実を示している。今回、国際社会からクローズアップされたことは極めて重要である。