10年前1人暮らしのお年寄りを取材した。独居の不便を尋ねた際、「一番怖いのは台風」と言うおばあさんを、当時30代だった私は意外だと思った

▼沖縄で台風は年中行事のようなもので、県民なら対応策を十分心得ているだろうから。風雨が強くなる前に食品や飲料水を買い置きする。戸外の物を家に入れ、雨戸を引き、停電や断水に備える

▼おばあさんもそうして何度も台風をやり過ごしたが、70代で独り迎えた時は違ったという。家の窓は飛んできた木切れでふさがれ、玄関の木戸は雨でふくらんで開かなくなった

▼足腰を悪くして、ふだん家や庭の手入れができなかったことが災いした。食品の買い置きも無い中で、自治体から支給されていた緊急電話は混線で使えず、結局食うや食わずで2日間閉じ込められたという

▼そんな体験談から私が知ったのは、自然災害への個人の対応には限界があるということ。雨音で防災無線や防災メールに気づかず多くの住民が避難できなかった広島の豪雨も、防災は1人に確実に届いてこそだという教訓を示した

▼台風19号の来襲に備えて南大東村は10日夕、役場職員が高齢者を1世帯ずつ訪れ避難所へ誘導した。「迎えにきてくれて助かった」というお年寄りの安堵(あんど)の声は、一人一人に寄り添うことが最強の防災策だと示している。(黒島美奈子)