自衛隊の米軍支援が、際限なく広がり、日本が米国の戦争に巻き込まれるのではと懸念される。

 自衛隊と米軍の役割分担などを定めた「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の改定に向けて、日米両政府が中間報告を発表した。

 現行ガイドラインの「周辺事態」の概念を削除し、地理的な歯止めをなくして日米の防衛協力を地理的、内容的に大きく拡大させるものだ。

 中間報告には、集団的自衛権の行使を容認した7月の閣議決定をガイドライン改定に「適切に反映」させると明記した。しかし日米の具体的な協力内容の記述は、最終報告に先送りされた。

 現行ガイドラインの「平時」「日本有事」「周辺事態」の3分類を撤廃し、武力行使に至らないグレーゾーン事態も含め「平時から緊急事態までいかなる段階においても切れ目のない形」で共同対応すると明記している。

 対米支援の地理的制約撤廃や地球規模に拡大する日米防衛協力は、日本の安全保障政策の一大転換につながる重大な問題を含んでいる。同時に、憲法や日米安全保障条約が許容する防衛協力の在り方を逸脱する可能性がある。

 日米安保条約は第5条で米国の対日防衛義務、第6条で米国への基地提供義務を定めている。6条はさらに「日本の安全に寄与し、極東における平和、安全の維持に寄与するため」と米軍の駐留目的を明記している(極東条項)。「地球の反対側」も含めた日米協力のグローバル化は、この条文と整合性が取れない。

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 今回のガイドライン見直しは本来なら、国会の承認が必要な条約改正と同様の内容を含み、日米同盟を大きく変えるものである。歴代の内閣が禁じてきた集団的自衛権の行使容認を憲法解釈変更の閣議決定で行うのも、憲法9条を空洞化させるものだ。

 年内のガイドライン改定を目指していた安倍晋三首相は、閣議決定を急いだが、ガイドライン改定と表裏一体と位置づけていた安全保障法制の整備は進んでいない。集団的自衛権行使の判断基準となる「武力行使の新3要件」の解釈についても政府・与党内で見解が食い違ったままだ。

 首相が中東ホルムズ海峡での自衛隊による機雷掃海の実施が新3要件に当てはまるとしているのに対し、公明党は新3要件を踏まえれば日本周辺の事態にしか対応できないとする。なぜ、この状態で閣議決定を強行したのか。

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 安倍首相の政治手法は、世論を二分する問題で、言動が一致しないことだ。首相は以前、国会の発議要件を「3分の2以上」から「過半数」に引き下げる憲法96条の改正論を掲げていた。「国民から国民投票の機会を奪うな」という論理だった。その当人が、発議権を持つ国会の議論を軽んじ、閣議決定による解釈改憲に踏み切ったのである。

 ガイドライン改定は、最終報告に向け、日米政府の協議が水面下で着々と進んでいるといわれる。集団的自衛権の行使容認にせよ、ガイドライン改定にせよ、国会軽視の姿勢があまりに露骨だ。