話し手が減少している石垣漁業のスマムニ(しまくとぅば)を記録しようと、琉球大学の「琉球方言研究クラブ」が、石垣市新川の漁師から聞き取った550語を収録した「石垣市字新川の漁業関連語彙(ごい)」を発行した。大学生8人が、漁師や家族から一語一語の発音や意味を詳細に調査し、本島言葉とも比較。移民の人々によるスマムニの変化なども明らかにした。9月の琉大祭で販売すると話題を呼び、異例の増刷で、今月から石垣市内で一般販売される。(八重山支局・新崎哲史)

金城正松さん(中央)から船の部位の呼び方を聞き取る琉球方言研究クラブのメンバー=8月、石垣市新栄町(八重山毎日新聞提供)

今月から一般販売される「石垣市字新川の漁業関連語彙」

金城正松さん(中央)から船の部位の呼び方を聞き取る琉球方言研究クラブのメンバー=8月、石垣市新栄町(八重山毎日新聞提供) 今月から一般販売される「石垣市字新川の漁業関連語彙」

 同クラブは毎年、調査地点を決め、しまくとぅばを収集し冊子を発行する。今回は同市出身で、祖父が漁師だった﨑山拓真部長=法文学部琉球アジア文化専攻3年=が調査を提案した。

 伝統漁は担い手が少なくなり、漁で使っていた言葉は日常生活の言葉より早く「消滅」する可能性がある。﨑山さんは「スマムニも伝統漁法も、受け継ぐ漁師が元気なうちに」との危機感を募らせていたという。調査は昨年11月から今年9月まで計13日行った。

 新川は明治期に糸満を中心とした県内各地から多くの漁民が移住。石垣のスマムニと混じり合い、独特の言語体系ができあがった。

 調査は、糸満の漁業言葉の先行研究から「漁法」「漁具」「地名」など生活の関連単語を選定。「石垣方言辞典」から同じ単語を探し、新川の漁師言葉がどの地域に近いかを比べた。

 8割近くが糸満言葉に近いものの、石垣独特の使い回しや違った意味を持つ単語がほとんどだった。

 糸満では「外海全体」を指す「フカヤー」は石垣では「サンゴ礁の内海で特に深い場所」の意味も。﨑山さんは「サンゴ礁が多い石垣では水深や海底地形の特徴から11の言葉で海域の微妙な違いを表現していた」と言葉の多様さに驚く。

 石垣にのみ伝わる追い込み漁「チナカキエー」や漁具、船の部位は写真で紹介。漁で使う八重山の海岸や海底地形の呼び名も地図上に分かりやすく記した。

 調査に協力した漁師の金城正松さん(76)も同クラブの取り組みを喜ぶ。現在50代の長男が小学6年の時、学芸会のスマムニの台本を家に持ち帰った。それを見た金城さんが間違いを指摘すると、「『父さん、方言話せるの?』と言われショックだった。伝えることをまったくしてなかった」と悔やむ。しかし、今回の調査に「若い人が言葉を残そうと頑張っていて、ありがたい」とほほ笑んだ。

 﨑山さんは中学の国語教師を目指し、しまくとぅばの継承にも取り組む考えだ。「しまくとぅばの学習は首里・那覇が中心。各地のしまくとぅばが継承できる機会を学校現場でつくりたい」と力を込めた。

 「石垣市字新川の漁業関連語彙(ごい)」はA4版134ページで2千円。同市の山田書店で販売予定。電話0980(82)2511。