創業何年、いついつから続く「老舗」との触れ込みを聞くと、何だか気後れが先に立つ。格式高い料亭や古式ゆかしい旅館、頑固な職人が代々受け継いだ雰囲気を少し味わってみたいと思いつつ、気軽には行きづらい

 ▼歴史を紡ぎ続けるそんな古い店は東京や京都などに多いと思いきや、県内でも半世紀や1世紀を超える店がある。本紙地域面の連載「わがまちの老舗」では、地域で長年親しまれてきたさまざまな場所を紹介し好評だ

 ▼戦争で灰燼(かいじん)に帰した中を生き延び、戦後の混乱期を乗り越えた沖縄の老舗は庶民的で温かい。今帰仁村や本部町で100年を超す食堂や旅館はレトロなたたずまいが心地よく、人懐こい店主との話も楽しい

 ▼大型スーパーの台頭に負けず、町なかで奮闘する商店や理髪店、銭湯などの素朴な姿に勇気をもらうが、一方で踏ん張り切れずに消える店もある

 ▼先日、会社仲間とよく行った名護市内のカレー屋が店を閉めた。オープンして約10年。老舗とは言えないが、知らせを聞いて連日みんなで通い詰め、最終日も閉店を惜しむ人で店はあふれた

 ▼店長は、したたる汗をふき「お世話になりました」と深々と頭を下げた。隣のうどん屋にも「貸店舗」の表示。店を支える市民の力だけでは及ばぬことがあると分かりつつ、寂しい思いで家路についた。(儀間多美子)