最近の糖尿病治療薬の進歩には目をみはるものがあります。血糖の平均値であるヘモグロビンA1Cの目標値は7%未満ですが、ただやみくもに下げるのではなく、肥満や重症低血糖を避け、血糖変動を小さくすることが予後の改善(QOLの維持・寿命の確保)につながることが知られています。ここ数年、このような良質な血糖コントロールを可能にする新薬が次々と登場して来ました。

 一つ目が古くて新しい薬、メトホルミンです。ヨーロッパでは生薬として中世以前から使われて来ました。現在、世界的には糖尿病治療の第1選択薬として使用されています。わが国でもようやくその価値が見直され、欧米並みの高用量で使用できるようになりました。安価ですが、血糖値を下げる作用以外にも、ある種のがんやアルツハイマー病に効果があるのではないかと言われており、単なる血糖降下薬というよりは「抗高血糖薬」とでも呼んだ方がふさわしい薬です。

 二つ目はDPP4阻害薬と呼ばれている薬で、近年わが国で最も処方量が増えている薬です。最大の特徴は血糖の高さに応じて必要なだけ膵臓(すいぞう)からインスリンを分泌させてくれる点でしょう。メトホルミンとの相性も非常に良く、次第に欧米でも第2選択薬の地位を固めつつあります。

 三つ目は尿糖排出促進薬(SGLT2阻害薬)です。糖尿病の薬なのにわざと尿糖を増やして血糖を下げるなんてまさに逆転の発想ですが、もともとは腎性糖尿(遺伝的に尿糖が出やすい体質)の人たちが、比較的健康で長生きなのにヒントを得た薬です。経口糖尿病治療薬では唯一体重を減らす効果が認められています。ただし、この薬を服用中は多尿になるので、脱水を起こさないよう十分な水分の補給が必要です。1年中さんさんと太陽が降り注ぎ、高温多湿な沖縄県では特に注意しなければなりません。

 以上三つの薬の共通点は、これまでの糖尿病治療薬と比べてはるかに過体重や低血糖を起こしにくいという点です。このように良質で理想的な血糖コントロールをするための役者はそろったと言えます。では必ずうまく行くのかと言えば、残念ながら現実はそうとは限りません。これら新薬の登場は、最も重要な点をあらためて浮き彫りにしてくれました。それは周りをどんな名脇役で固めても、糖尿病療養の主役は患者さん本人ということです。今こそ真剣に食事療法と運動療法に取り組むことが求められています。(田仲秀明・田仲医院)