復帰後、那覇市政の舵(かじ)を取ってきたのは、革新系の平良良松氏、続いて同じく革新系の親泊康晴氏、その後、保守系の翁長雄志氏だった。それぞれが4期と長きにわたって県都の顔となった。

 きょう告示される那覇市長選には、前副市長の城間幹子氏と前副知事の与世田兼稔氏が立候補を表明している。城間氏を支持するのは市議会保守系の新風会と共産、社民、社大などの各党、与世田氏を推薦するのは自民、公明の両党である。

 保守対革新という従来の対立パターンに変化が生じ、過去にない構図で争われる。

 那覇市には沖縄の人口の4分の1に近い32万人余が暮らしている。かつて米軍基地だった場所に新しい街が形成され、県内唯一の鉄軌道が走るなど活気に満ちる。2013年には中核市へと移行、県都としての求心力を発揮する。

 しかし10年、20年後の将来像を描く時、直視しなければならない課題がある。

 有識者らでつくる日本創成会議の試算によると、2040年の那覇市の人口は28万人余、子どもを産む若い女性は今より3割以上減る。復帰後、緩やかだが増え続けてきた人口は、そう遠くない時期に減少へと転じるのだ。

 人口減の一方で、核家族化は進む。高齢者の割合は急激に増え、介護の需要が増す。社会を形づくる家族の形態が大きく変わっていく。

 子育て世代でにぎわい、年をとっても、1人になっても安心して暮らせる街づくりの総合的な戦略が市長候補者に求められている。

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 城間氏、与世田氏とも、子育て政策、とりわけ認可保育所に入れない待機児童問題を最重点政策に掲げる。

 4月1日時点の那覇市の待機児童は439人で、中核市の中で一番多い。本来受けられる保育が受けられない不利益は深刻である。

 城間氏は「子の環境を整えることは親の働く環境を整えること」と述べ、「待機児童ゼロに向けて認可保育園の増園、定員の拡大」を訴える。

 与世田氏は「待機児童解消計画を再検討し17年度末か、可能な限り早期にゼロを実現」と語り、「事業所内保育施設の設置促進」も盛り込む。

 見えにくいのは沖縄の保育問題の課題である潜在的待機児童へのアプローチや保育所の5歳児枠の拡大だ。

 非正規が多く給与が低いなど保育の担い手たちの現状にも目を向け、働きを評価する仕組みも示してもらいたい。

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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐる問題で両者の姿勢は異なる。城間氏が「最大の争点」と移設反対を表明しているのに対し、与世田氏は「争点ではない」との立場をとる。

 そもそも今回の市長選は新基地建設に反対し、知事選へ立候補した翁長前市長の後継を決める選挙である。

 基地は日本の安全保障に関わる問題であり、沖縄だけが悩む問題ではない。同じように新基地建設もひとり名護だけが抱え込む問題ではない。

 基地も暮らしも、有権者の判断を仰ぐために大いに語り、競ってほしい。