安倍晋三首相と中国の習近平国家主席の首脳会談が北京で開かれる見通しだ。安倍首相は9日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席のため北京入りした。首脳会談は、同会議の場を利用して行われる予定である。

 日中の首脳会談は、2012年5月以来、約2年半ぶりとなる。第2次安倍政権では初めてだ。

 日中関係は1972年の国交正常化以来「最悪」といわれるほど冷え込んでいる。東アジアの緊張緩和は、尖閣諸島を抱える沖縄にとっても切実な問題であり、私たちはこれまで日中対話の実現を求めてきた。まずは、首脳会談の開催を歓迎したい。

 会談開催の前提となったのは、日中の関係改善に向けた4項目の合意文書である。会談前にこのような文書が発表されるのは異例だが、裏返せば、それほど両国の溝が深いということだ。

 最大の懸案である尖閣問題をめぐっては、中国側が領有権問題の存在を認めるよう要求し、日本側は「領有権問題は存在しない」とする立場を堅持していた。

 合意文書では「東シナ海の海域において近年、緊張状態が生じていることについて異なる見解を有している」と表現した。見解の違いについては、日中双方が都合よく解釈できる余地を残した。

 主張に大きな隔たりがあるなら、相違点を挙げるより、ぎりぎりの一致点を見いだすことが「外交の知恵」とも言える。両国が歩み寄り、関係改善の糸口をつかんだことを評価したい。

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 合意文書には東シナ海での「不測の事態」の回避策も盛り込んでいる。「対話と協議を通じて情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避する」と明記した。

 尖閣の国有化以降、中国公船による領海侵入が常態化し、安倍政権は軍事的な対抗路線を強化している。中国艦船による自衛隊護衛艦への射撃管制用レーダー照射や、中国軍戦闘機の自衛隊機への異常接近など不測の事態が危惧される出来事も相次いだ。

 偶発的な衝突が起こる可能性がかつてなく高まっている。その偶発的衝突が、軍事的衝突にエスカレートするのを防ぐためには、両国間で「海上連絡メカニズム」を構築しておくことが必要だ。首脳会談を通して、早急に実現への道筋をつけるべきだ。

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 中国側は、安倍首相が靖国神社に参拝しないことを確約することも求めていたが、合意文書では靖国参拝には触れず「歴史を直視し、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の一致をみた」など、抽象的な表現にとどめた。

 首相は、自身の問題は含まれていないとの認識を示すが、昨年12月末の靖国参拝が、両国の関係改善の大きな障害となったことを忘れないでもらいたい。

 両首脳には、合意文書にも明記された「戦略的互恵関係の発展」に基づき、関係改善に向けて一歩ずつ前進していく強い意志が求められる。