安倍晋三首相と中国の習近平国家主席による日中首脳会談が実現した。

 両国首脳の会談は、2012年5月に当時の野田佳彦首相と温家宝首相が会って以来、実に2年半ぶり。第2次安倍政権発足後は初めてで、13年3月に主席に就任した習氏にとっても初となる。

 冒頭、顔を合わせた両首脳の表情は硬く、握手の動作もぎこちなかった。国内の反日世論を無視できない習主席と、下手に「譲歩」すれば政権基盤が揺らぎかねない安倍首相。全体を包むこわばった空気が、やっと実現した会談の性格を映し出した。

 首脳会談の直前に、両政府は、尖閣諸島をめぐる問題で見解の相違を認め対話と協議に入るなど4項目からなる合意文書をとりまとめた。異例のことである。中国側が会談という言葉を使わず、20分余りとごく短い話し合いとなったのも異例だ。

 それでもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の場を借りてトップ会談にこぎつけたのは、「尖閣周辺での緊張状態が衝突につながりかねない」との認識で一致したからである。

 両国首脳が顔を合わせるまで、福田康夫元首相が極秘に訪中したり、外相同士が会談を重ねるなど、公式、非公式の交渉を続けてきた。複雑に絡まった糸を時間をかけてほぐしてきたのだ。

 国交正常化以降、最悪とまでいわれた関係である。具体的な成果というよりも、トップ同士が会ったことに意味がある。

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 小泉政権下で冷え込んだ日中関係を仕切り直そうと、第1次安倍政権時の2006年の首脳会談で、首相が打ち出したのが双方の関係を発展させる「戦略的互恵関係」の概念であった。

 今回の会談でも、日中関係の改善に向け、戦略的互恵関係の必要性を確認している。まずは「原点に立ち戻る」ということだ。

 一方、歴史認識問題で安倍首相は、「歴代内閣の歴史認識を引き継いでいる」と表明。過去の植民地支配と侵略を認めた村山談話を継承する考えを示した。

 習主席は懸念のある安倍首相の靖国神社参拝には触れず、「歴史問題は13億人の中国人の感情に関わる」とけん制した。

 仮に会談後、安倍首相が靖国神社を参拝するようなことになれば、関係はまた崩れかねない。

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 会談では尖閣周辺での不測の事態を回避するためホットラインの設置など「海上連絡メカニズム」構築も確認した。

 尖閣問題は、沖縄に住む私たちにとって単なる領土問題ではない。そこは豊かな漁場であり、生活の場だ。偶発的な衝突が軍事的な衝突にエスカレートすれば、火の粉は県民に降りかかる。

 日中間に横たわる問題が一気に改善するわけではないが、こつこつと丁寧に話し合いを重ね、両国が争わない「不戦の誓い」を目指すべきである。

 手始めに尖閣で衝突が起きないよう危機管理の枠組みづくりを急いでほしい。