那覇から北部に向かう途中空を見上げると何だか月が赤っぽい。「皆既月食だ」。適当な場所に車を止めてカメラを手に、しばし観測。その姿に気付いたドライバーも数台後ろに続いた

 ▼この秋は、月をめぐる天体ショーが相次いだ。映画のシーンのような巨大なスーパームーンに皆既月食、先週は「後の十三夜」と呼ばれる珍月が171年ぶりに昇った。幸い、全てまぶたの裏に焼き付けた

 ▼旧八月十五夜の「中秋」にも勝る、と昔の人に愛された旧九月十三夜の月。約3年に1度の割合で1年が13カ月になる旧暦の「閏(うるう)月」が、今年は9月に当たり、名月が2度現れた。前回は1843(天保14)年、江戸末期のころ

 ▼沖縄でも、八重山民謡で「月ぬ美しゃ/十日三日」と十三夜を歌っている。まん丸な満月を愛(め)でるのは分かるが、少々いびつな十三夜の月に愛情を注ぐ、感性の深さに感じ入る

 ▼非の打ち所のない完璧さは、時に冷たさや物足りなさを伴う。いにしえの人々は、これから満ちゆく不完全な月の光に趣を見いだし、秋の実りを願ったのだろう

 ▼忙しい現代、完全無欠もいいが、過程や余韻を楽しむ心を忘れずにいたい。兼好法師も徒然草に残している。「花は盛りに 月は隈なきをのみ 見るものかは(桜は満開の時だけ、月は満月だけを見るものだろうか)」(儀間多美子)