永田町に突如として解散風が吹き始めた。自民、公明両党は「12月総選挙」を前提に準備を加速させている。浮き足立つ野党も選挙態勢づくりに動き始めた。

 それにしても唐突な印象は拭えない。重要な政策課題が新たな争点として浮上し、国民の判断を仰ぐ必要が生じたのなら分かるが、降って湧いたような今回の解散論には大義が見当たらず、目的がはっきりしない。

 火の元はどこなのか。情報の発信源は誰なのか。

 12日に配信された共同通信の記事によると、安倍晋三首相は12月に衆院選を実施する意向を固め、自民、公明両党に伝えていた。与党側は「解散は首相の専権事項」だとして受け入れる意向を示したようだ。

 なぜ今、任期半ばの衆議院を解散し、選挙を実施する必要があるのか。与党内には、来年10月に予定される消費税再増税を先送りすることを決め、その上で衆院解散に踏み切る案が浮上しているという。

 この理屈には無理がある。消費税増税は国民生活を直撃する重要な課題だけに、上げる前に選挙で国民の判断を仰ぐべきであるが、増税の先送り方針を決めたあとに、先送りの是非を選挙で問うても争点にはなりにくい。

 世論の反対が根強い再増税を先送りし、その上で選挙準備の整わない野党の隙をついて解散を断行すれば戦いを有利に展開することができる-そんな読みが背景にありそうだ。

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 衆議院の解散権は、首相の権力の源泉といわれる。政権維持に都合のいい時に衆議院を解散することができるからだ。「伝家の宝刀」とも形容される。

 だが、このような権限が憲法で明記されているわけではない。日本国憲法には内閣の解散権を明示した規定はないのである。

 解散には、内閣不信任決議案が可決または信任決議案が否決されたときの69条に基づく解散と、天皇の国事行為を定めた7条に基づく解散の二つの種類がある。

 憲法第7条は、天皇の国事行為として「内閣の助言と承認」に基づいて「衆議院を解散すること」を定めている。通常の解散の根拠になっているのはこの条文である。

 「7条解散」が慣行として成立しているのは確かであるが、無制限の権限を与えたものではない、との解釈が有力だ。解散にあたって絶えず大義が問われるのはそのためである。

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 任期途中に衆議院を解散し、総選挙を実施するということは、内閣が国民に対して信を問う、ということである。問うべきことが明確でなければ、党利党略の解散だと批判されても仕方がないだろう。

 ただし、国民に信を問うべき政策課題がないわけではない。

 集団的自衛権の行使容認はその最たる例だ。内閣が長い年月をかけて築き上げた憲法解釈を閣議決定だけで覆す。その是非は選挙で問われるべきだし、米軍普天間飛行場の辺野古移設計画もそうだ。