名護市辺野古の大浦湾を埋め立てる新基地建設工事は見直すべきである-。日本生態学会など自然史研究に携わる19の学術団体が、連名の要望書を国や県に提出した。

 国が実施した環境影響評価(アセスメント)についても「この海域の特異性がきちんと評価されていない」と問題視し、再調査するよう求めた。

 学術団体が19もの規模で名を連ね、合同要望書を出すのは異例だ。

 それだけ大浦湾の自然環境が、著しく高い生物多様性を保持している事実を意味している。同時に、埋め立てが差し迫り、その豊かさが永久に失われる恐れに危機感を募らせていることをも浮き彫りにした。

 要望の取りまとめに当たった研究者らは「世界の宝をみすみすつぶそうとしている」「最もやってはいけない愚行」などと埋め立て工事に警鐘を鳴らす。

 国や県は、この要望書を重く受け止め、埋め立て工事に向けた全ての手続きを、ただちに中止すべきである。

 併せて、私たち一人一人も、この海域の豊かさにいま一度目を向けたい。

 要望書は、大浦湾一帯について「世界の生物多様性のホットスポットの一つと認識されているわが国の中でも極めて生物多様性の高い地域」と指摘する。

 要望書によると、沖縄防衛局が実施したアセスメントでは、5334種(水鳥含む)もの生物が海域で記録されている。そのうち262種が絶滅危惧種だ。

 さらにアセス後も新種や国内初記録の生物種が相次いで見つかっている。

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 日本自然保護協会は7月、辺野古の埋め立て予定地内で、国の天然記念物ジュゴンの新たな食痕が〓カ月間で110本以上確認されたと発表した。

 丈が3~7メートルもの海藻の群落も見つかった。ホンダワラ科の褐藻マジリモクと判明したが、サンゴ礁域の暖かい海で人の背丈を超えるほどの海藻は珍しいという。

 県内では沿岸の開発などで生態系が大きく損なわれた場所が多い。その中で、大浦湾が極めて高い生物多様性を保ち続けて来られたのはなぜか。

 専門家はこう指摘する。河口にマングローブ林が発達し、干潟、砂場、泥場、サンゴ礁、海草藻場-と変化に富んだ環境が隣り合って広がる。多様な環境が連続していることこそが、豊かな生態系を支えている、のだと。

 しかし、アセスには、この海域の特異性への評価が欠けている。

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 沖縄防衛局は、埋め立て工事に際し、専門家でつくる「環境監視等委員会」の助言を得て環境保全に配慮する、との立場だ。

 しかし、ひとたび埋め立てられれば海流が変わり、多様な環境の連続的な広がりが分断される懸念は拭えない。環境への負荷は明らかだ。

 世界に誇るべき宝の海を埋め立てる愚行は認められない。生物多様性条約の締約国として、保全に向けた調査こそ急ぐべきである。