「寡黙」が絵になる男だった。「不器用」さえ格好良い生きざまに変えた。世界に2人といない名優が永遠に旅立った

 ▼任☆(人ベンに夾)(にんきょう)映画「網走番外地」シリーズや「幸福の黄色いハンカチ」「鉄道員(ぽっぽや)」などの主演で知られる映画俳優の高倉健さんが83歳の生涯を終えた。活躍は59年、出演作は205本に及んだ

 ▼1960年代の任☆(人ベンに夾)ものでは若い男性を魅了した。代表作中の代表作「幸福の黄色いハンカチ」で真骨頂を発揮し、人気を不動にした。必死に生きてきたのに報われず、武骨さの中に哀愁や優しさがにじむ愚直な役に魅せられた

 ▼健さんは、演じるというより役柄をのみ込んで自分の心身と一体化させる。時にはせりふよりも背中や耐える、その姿が多くを語った。気が付けば、現実の高倉さんに重ね合わせて観賞したことが何度あっただろうか▼文化勲章を受章した昨年、落ちこぼれだった俳優養成所時代は、母からの「辛抱ばい」という言葉を支えにしたと明かし「映画は国境を越え、言葉を越えて“生きる悲しみ”を希望や勇気に変えることができる力を秘めている」とコメントした

 ▼2年前に公開された主演作が遺作となった。映画人生の最期は「生ききった安らかな笑顔」だったという。渋みのある「寡黙で不器用な名優」は、きっともう二度と現れない。合掌。(与那嶺一枝)