衆院がきょう解散される。12月2日公示、14日投開票に向けて、事実上の選挙戦に突入する。

 安倍晋三首相は、消費税再増税の先送りの是非について「国民に信を問う」としている。しかし、今回の首相の決断は国民に負担を求めるものではなく、解散しなければならない切迫性は乏しい。あえて解散に踏み切るのは、野党の選挙準備が整っていないこの時期が最善のタイミングだと判断したからだ。「自己都合解散」である。

 首相は再増税先送りの理由として「景気が腰折れすれば元も子もない」と、足元の経済の弱さを認めた。総選挙では、経済政策「アベノミクス」が、本当に経済の好循環をもたらす効果があったのかどうか問われるべきである。

 集団的自衛権行使を容認した安全保障政策や原発再稼働など、国論を二分する問題に対する安倍政権の政治手法そのものも、問われなければならない。

 国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法は、昨年12月、数の力で強行採決を繰り返し成立した。国民の知る権利や報道の自由への懸念が払拭(ふっしょく)されないまま、12月10日の施行が迫っている。

 ことし7月には、歴代の内閣が国会議論を積み重ねてきた憲法解釈を変更し、集団的自衛権行使容認を閣議決定した。安倍首相は2月、政府の憲法解釈について「最高責任者は私だ。その上で選挙で審判を受ける」と述べた。

 集団的自衛権の行使容認は経済政策と並ぶ最大の争点である。

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 県内では知事選が終わったばかり。わずか1カ月の間に2度の大型選挙が実施されることになる。

 最大の争点は、知事選同様、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題である。知事選では仲井真弘多氏の埋め立て承認の是非が問われた。衆院選でも県関係の自民党国会議員が、公約を転換して辺野古移設を容認したことの是非を争点化すべきである。

 菅義偉官房長官は19日の会見で、集団的自衛権行使容認の閣議決定や特定秘密保護法の是非は、衆院選の争点にはならないという認識を示した。菅氏は以前、辺野古移設について「過去の問題だ」と述べ、知事選の争点化を避けようとした。

 安倍政権は自らに不都合な現実を見ようとしない。知事選直後に、辺野古の新基地建設に向けた海上作業を再開するのもその延長線上にある。衆院選では、辺野古移設を日本全体の問題として争点化すべきだ。

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 県内は、中小零細企業が圧倒的多数を占め、非正規労働者の比率が全国一高い。子どもの貧困も深刻である。

 アベノミクスは争点となる政策課題の一つであるが、一般論でその是非を問うのではなく、沖縄の視点に立って問題を問い直す必要がある。

 知事選の投票率は64・13%で前回を3・25ポイント上回った。衆院選は師走の慌ただしい時期とも重なる。投票率を下げないためにも、各政党には対立軸を鮮明にした政策を掲げて戦ってもらいたい。