まるでテープレコーダーに吹き込んでいた言葉を、メディアの求めに応じて聞かせているような印象だ。

 安倍晋三首相は22日の共同通信社のインタビューで、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題に触れ、次のように答えた。

 「米軍の抑止力維持と普天間の危険性除去を考え合わせたときに唯一の解決策だ。引き続き日米合意に従って進めていきたい」

 「唯一の解決策」という言い回しは、日米の担当者が世論向けに、示し合わせて使っている表現である。政府は、この種の言葉を繰り返し発信することで県民のあきらめを誘い、時にアメをばらまいて県民を懐柔したり、はたまた威圧感を与えて従わせようとしてきた。

 政府は、あらゆる手段を使って辺野古移設を正当化し、県民に受け入れさせようとしてきたが、返還合意から18年たっても、反対の民意が萎縮することはなかった。

 1月の名護市長選で辺野古移設反対の稲嶺進市長が再選され、続く県知事選でも辺野古反対を主張する翁長雄志氏が、辺野古容認の現職、仲井真弘多知事に約10万票の大差をつけて初当選した。

 18年に及ぶ紆余(うよ)曲折の過程で県民は、経験を重ね、日米安保体制について学び、決して辺野古が「唯一」の選択肢ではないという政治的確信を持つようになったのである。

 安倍首相は「沖縄の方々の気持ちに寄り添う」ことを常々、口にする。言葉はソフトだが、現実とのかい離があまりにも大き過ぎる。

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 安倍首相は「沖縄の方々の気持ちに寄り添い」という表現を、6月23日の慰霊の日にも、9月の所信表明演説でも、同じように使っている。

 多数の遺族が参列した全戦没者追悼式で、安倍首相は「沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、できることはすべて行う」と約束した。

 厳粛な場での首相の「断言」である。信じたい気持ちはやまやまだが、知事選で示された民意と、辺野古で進む埋め立て工事の強行と、この発言は、結びつかない。

 安倍首相は昨年4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効した日に「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」(政府主催)を開き、式典の最後に参列者とともに「天皇陛下バンザイ」を三唱した。

 沖縄が切り離された日を祝うことが、安倍首相の言う「沖縄の方々の気持ちに寄り添う」ことなのであろうか。

 言いようのない深い疑問を感じる。

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 憲法解釈を閣議決定で変更し、集団的自衛権の行使容認に道を開いた安倍首相は「(憲法解釈の)最高の責任者は私だ」「私たちは選挙で審判を受ける」と述べた。

 選挙に勝てば憲法解釈を自由に変えられる、といわんばかりの発言である。

 共同通信によると、安倍首相は周囲に「選挙の大義は解散する首相が決める」とも語っていたという。

 安倍政治は沖縄に何をもたらしているのか-衆院選では、その是非が問われなければならない。