小さな公民館の舞台、わずか1時間ほどの上演だったが観客は満足していた。先日、久米島町の民俗芸能団が名護市東江区を訪れ、双方の地域に伝わる村踊りを披露しあった。みんながよく知る演目でも、衣装や表現などが少しずつ違う。人々はその地域性を楽しんだ

 ▼特に、各地に伝わるおなじみの雑踊「浜千鳥(チジュヤー)」では、司会の演目紹介の後、衣装をまとった久米島仲泊区の男性が壇上にぞろぞろと登場。会場はあっけにとられ、どよめいた

 ▼手首をしなやかにくねらせ優雅に舞う本来の女踊りにはほど遠い、無骨でどこか滑稽な男踊り。眉根を寄せて、至極真剣な表情で舞う姿に、会場は笑い転げた。「こんなの初めて見た」。東江区の人々は拍手喝采で大喜び

 ▼奇抜な踊りは「体操浜千鳥」と呼ばれ、昭和初期に仲泊区の男性によって男踊りに振り付けし直された。以来、地元で親しまれ、祭りなどで演じられている

 ▼それぞれの地域で独自に変化し、世代継承されて文化となる。それこそ民俗芸能の奥深さだろう。だが演者らは地元の踊りが他地域でこれほど喜ばれるとは思わなかったという。目の前の「当たり前」は案外見えていないものだ

 ▼大切に守られ受け継がれてきた芸能も、外の空気に触れることで新たな息吹が生まれ、さらに発展するに違いない。(儀間多美子)